ポッキーで許して




「ねえ、なまえはチョコどうする?」

「はへ?」

「あのさポッキーくわえたまま間抜けな顔すんのやめてくれない」



「………チョコ?」









授業の休憩時間には決まっていのとお喋りして時間をつぶす。喋るといってもいのが一方的にベラベラ喋ってるだけだけど。「サスケくんが〜」とか。

そんなある日、めずらしくいのは難しい顔をしてある本を読みながら話を振ってきた。


話の趣旨がわからず首を傾げて、いのが難しい顔で見ている本を覗いてみた。
そこには"バレンタイン特集!想いが届くレシピ"の題名とともにチョコの作り方が書いてあるレシピが目に入った。








「ああ、バレンタインね」

「それ以外なにがあるのよ」

「そうだよね、忘れてた」



アハハと笑って袋からまたポッキーを1本取り出す。




「いのは…、サスケくんにか」


「もち!あと、友達にも何人かあげるよ」


「私にはー?」

「はいはいなまえにもあげるってば。あんた、ほんと食意地ばかりね」

「えへへ」


テレたように頭を掻いて、また袋からポッキーを取り出す。あれだけあったポッキーもこれでラストになってしまった。




「…あんた、それ私のって知ってる?」

「知ってるよ」



「と、言いながら最後の1本奪っていくのね」


呆れながら「まあいいけど〜」なんて言ってまたいのは本に目を向けたが、何かを思い出したように顔をあげた。








「………あ、なまえもあげるでしょ?」

「え、誰に?」








「シカマル」



「シカマルゥ〜?んー、どっしょっかな〜、いのもシカマルにあげる?」


「まあねえ一応。だからあんたも渡したら?」



ま、どうせ義理だもんねー、なんて笑いあいながら私たちは軽く考える。








アカデミーに入ってから仲良くなったシカマル。


地味なくせに意外にモテるやつ。
毎年バレンタインはちゃっかりいっぱいもらっていたりして、なんかとにかくいろいろとずるいやつ。


男女隔てなく接するから意外に女友達も多くてその中の一人が私。


いのは幼馴染らしいから毎年あげてるみたいだけど。








「なまえはどうせ私にくれないんでしょ」

「うん。私もらう側だから」

「ホワイトデーは倍返しね」

「まかせて!」







それにしても、うううーん。シカマルにチョコか。去年あげたっけ私。

シカマルどうせちゃっかりいろんな女からもらうんだろうし、別に私があげなくってもいいような。


でも、みんなあげるなら私もあげたほうがいっか、なんか感じ悪いし。


ま、どーせ義理だしねー。



































「ああ、なぜ私がこんな目に」


忍術の授業中にチョウジから奪ったお菓子を食べていたら、チョウジがマジギレしちゃって騒いでたらイルカ先生におこられてなぜか私だけ日直を回された。


本来なら今日いのだったのに…、「ありがとね〜!」なんて嫌味吐いてさっさと帰っていってしまった。
日直嫌い。戸締りしなきゃいけないから最後まで残らないといけないもん。
日誌も書かなきゃいけないし、黒板も消さなきゃだし。



あーあ。お腹すいた。















「あー、めんどくせーな」


ガラガラと教室の扉が開くとともに聞こえる声。なにごとかと思えばゲンナリしたシカマルが入ってきた。







「あ、シカマル」

「!……おー、」


まさか誰かいるとは思わなかったみたいで多少驚いた顔をして、すぐに渋い顔をして目をそらした。

まあそんな顔をしたくもなる。あんな大きな独り言を聞かれたのだから、恥ずかしかろう。






「えー、ちょちょ、なになに?なにがあったのー?」


とからかうように聞けば、眉間の皺がもっと深くなる。





「なんでもねーよ」

「なんもなくないよ。すごくぶっさいくな顔してたよ、さっき」

「うっせ」


シカマルは軽く私を睨むと、教室の扉を閉めてこちらに歩み寄ってきた。





「あー、自業自得の日直か」

「うるさいなー、黙れし」



今度は私がシカマルを睨めば、からかうように眉を上げて笑い、私の前の席の椅子に腰を下ろす。








「帰らないの?」

「いや、とりあえずここにいる。お前といればなにかと安心だし」

「は?なにいっての?」




意味がわからず首を傾げていると、教室の扉がガラガラ開く。
二人して扉を見ると、可愛いらしい女の子がもじもじしながら立っていた。







「あ、あの、奈良くん」

「あー、なに?」


めんどくさそうに答えるシカマルになぜかこちらが慌てる。態度が悪いってばよ、シカマル…。






「お話が…その、あって…、時間ある、かな?」


「わりぃーけど、今こいつと喋ってっから」

「え、いーよ、行ってきなよ」


なんて言うと、机の下から足をガンと蹴られた。




「(いったー!!)………くうー!」



痛みを耐えながら足をさする。シカのアホー!急に蹴ることないじゃないの!


「ちょっとだけでも、だ、だめかな」

「むり」


「…!そ、そっか。ごめんね」



私にまでもわかる、明らかに落ち込んだ顔を見せた彼女。
なぜだか私が悪いことをしてしまったように、後味悪い。シカマルを見れば、相変わらず態度が悪いまま。彼女の顔すら見ていない。



「…………」



ゆっくりと扉が閉められて、シカマルははあとため息をした。
その顔は先ほど教室に入ってきた顔と一緒の顔をしていて、
そういえば、最近シカマルため息ばかりついているような。それに、シカマル休憩時間になると教室いなくなるけど………。








「……モテモテさんね」

「あ"ー、めんどくせー」


「それ、キバとナルトに言ったら殺されるよ」

「知るかよ。俺の身にもなってみろよ」


「『俺の身にもなってみろよ』、あー、言ってみたいわ」

「………うぜーぞ、お前」


「ハハハ、ごめんごめん。じょーだんだから」


眉を下げて笑うと、シカマルは「ったく」とまたため息をつく。




「シカ、お疲れ」

「どーも」


「いーな、私もモテたい。人ってモテ期3回くるんだって」

「それ嘘だな」

「えー」

「めんどくせーけど、俺3回以上は来てる」


「なんか、めんどくせーとか言ってる時点で腹が立つわ」





「ったく、なんで俺がこんな目に…」


なんて贅沢な悩みなんだろうか、と目を細めてみたものの、当のシカマルってば本当にゲンナリしているし、


やっぱり、モテたい気持ちがない人にとったら大変なことなのかも。




「うーん、やっぱもうすぐバレンタインだからかな?その前にOKもらいときたいとか?」


「あー。バレンタイン…」


と、またゲンナリするシカマル。




「なんかシカマルを見てたらバレンタインって迷惑な行事に見えるよ」



「迷惑ではねえけどよ、なにかとめんどーつーか」


「まあ今より増えるわな、告白」


「だー!」




と、机に項垂れるシカマルの束ねた髪の毛を眺める。






「可哀そうに。なんか同情するよ…。私シカマルにはチョコあげないから!」

「あ?」


「義理でもって思ったけど、あげないから!安心していいからね!」


胸を張って、起き上がったシカマルの肩に手を置いた。


「つーか、義理とか堂々と言うなよ。お前」


「あ、」


と、ハハと笑って、とっくの昔に書き終わった日誌をパタンと閉める。







「さ、殿!今日は私が護衛しますんで、ささ、帰りましょう」


両手をドアの方に向けると、シカマルは呆れたように私を見た。お得意のめんどくさそうな顔をして立ち上がると、私たちは教室を後にした。








案の定、私でもシカマルの護衛ができるようで、シカマルに話しかけたそうな女の子は私を見るなり諦めて、ただシカマルが通り過ぎるのを見送っているだけだった。



チラっとシカマルを見ればしれっとした顔をしているし。





シカマルって女に興味ないんじゃ…、










「つーかなまえ、他のやつにもあげんの?」

「え、チョコ?まああげるけど」

「誰だよ」



「シノ」



「シノ…?お前、趣味わりーぞ」




「おま、失礼だぞー今の!」

「…わりい」


「つか本命じゃないっての。義理に決まってんじゃん」

「なんでシノだよ」



「シノ、幼馴染だから毎年やってんの。ホラ、あいつ陰険だからさどーせチョコもらえないっしょ。可哀そうだから」




「お前もかなり失礼だぞ」




「私はいーの、幼馴染だから!」


と言えばシカマルは呆れたように私を見た。





「つーかよ、まあ別に嫌じゃねーし」


「は、なにが?」




「だから、チョ、」


「あ!シカごめん!もうここまでくればいいよね!ちょ、アニメはじまっちゃうから先帰るね!」

「は!ちょ」


「じゃーね!」






「……あー、めんどくせーな、女って」


































「ハイ、なまえ。ハッピーバレンタイン!」

「うわーい!」


両手広げて受け取ると、いのは嬉しそうに笑った。




本日、2/14。
嬉し恥ずかしのバレンタイン。あ、シカマルにとったら嫌だ地獄のバレンタインか。なんつって。











「サスケくんにはもうあげた?」

「もちー!一番初めにあげた!」

「抜かりないね」


「でも、悔しー!あのデコリンに先越された…!!」


と燃えたぎるような怒りをにじませたが、すぐさま切り替えて立ち上がった。こういうところがいののすごいところよね。






「さ、これから義理チョコを野郎共に渡しに行くか!なまえも行くでしょ?シカマル」

「あー、私なにもないから行ってきていいよ」

「用意しなかったの?」


「うん。シカマルを思って」




「…は?まあよくわかんないけど、行ってくるわ」

「いってらっしゃーい」


とひらひらと手を上げて大量のチョコを持ったいのの後ろ姿を見送った。さてと。私もシノんとこ行ーこう。





























「シノー!」

「なまえ」

「ハイ、チョコだよ」

「すまない」


「いーよ、どうせ誰にももらえてないんでしょ」



「…なまえ」

「いいっていいって!お礼は!水臭いなーもう!」

「いや、そうではない」

「じゃねー!」



「………相変わらず失礼なヤツだ」
























シノに無事チョコを渡し終えて教室に戻ると、向こうの廊下からチョコを手一杯抱えたシカマルがやってきた。





「うっわー、ぶっさいくー!」

「うるせっての」

「しっかし、今年も大量ですな。いいなー」


「じゃあ、やるよ」

「え、い、いいよ!食べてあげなよ」


さすがにバレンタインのチョコを横取りしたいなんて食意地はないぞ。




「どーせ一人でたべきれねーての」

「え、じゃあ毎年どうしてんの?」

「チョウジにやってる」


「おま!ひでー!」

「言っとっけど全部じゃねーからな、なるべく食べてるよ。それでも無理な時はチョウジ」


「あ、そう。意外に優しいね」


「意外ってな……、つか」

「ん?」




「………………」



「………………え、なに?」




じーと私を見るシカマルに首を傾げるとまたお得意のため息をされた。




「お前まじかよ」

「え、なにが」



「くれねーの」

「え!チョコ?」


「おー」




「ええええ!いんの!いらないっつったじゃん」


「いってねーって。お前が勝手にそう解釈したんだろ」



シカマルはめんどくさそうに横目に私を見る。





「そうなの?じゃあ、用意すればよかったね」

「まあ、いーけどよ」

「うん。まあいいじゃん。そんだけあるんだからさ」





「…あー、だから」

「ん?」



「なまえは別だろ」



「え、別なの?」





「………はあ。めんどくせーなお前」


「ちょ、めんどくさいとか、…よく言われるけど、ひどっ!」




「あのなあ、ったくなまえと話すところころ飛ぶからめんどくせー。ちゃんと聞けアホ」


「アホだと!」


「だーかーら」


眉間に深くシワをよせて、シカマルはめずらしく大声をあげて私に近寄った。




「な、なに」


「お前まじでわかんねーのかよ」



「えー?…」




シカマルがちょっと本気で怒っているのはさすがの私もわかる。わかるけど…、





「あ、」


「わかったか、アホ」



「あー、そういうことなら…」


私はゴソゴソとカバンの中に手を突っ込んだ。その姿を見てなぜだかシカマルはぽかーんとしている。





「お前なあ……わかってねーだろ」




「わかってるよ。ちょっとまってて、確かここに…、あ!あった!」



とお菓子用に持ち歩いていたポッキーを袋から一本取り出した。






「チョコ欲しいんでしょ」

「は、いや、俺が言いたかったのは、そうじゃなくて…」



「いーからいーから、はい、あーん」


「…………」




シカマルは特上のぶっさいくな顔をして口を開けた。
チョコをあげてるというのにその顔はなんだ!なんて顔をするともっとぶさいくになっていくシカマルの顔。





「うまいっしょ」


「たりめーだ。売ってんだからな」

「なによ、人がせっかくチョコあげたのに!チョコ用意しなかったから怒ったくせに!」




「だからちげーって」


「じゃあ、そんな顔しないでくださる?」





「あー、もういいわ。俺教室戻る」

「え、あ、ちょ!」









ポッキーで許して










「シカー?」

「うるせー」

「あら、シカマルご機嫌ななめね」

「いの、そーなの!なんかシカマル怒ってる」

「なまえ、なんかしたのー?」

「した。コイツ告白させてくんねーの、話流しやんの」


「ええええええ!」


「なまえ、それはひどい話ね」

「え、ちょ、!」










→あとがき

シカマルはめんどくせー女に引っかかる男だと思う。


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