よおみょうじ。今年は同じクラスだな。こいつ?ああ、仁王って同じテニス部の。お前見に来たことねーからわかんないと思うけど名前くらいは知ってんだろ?見た目アレだけど普段はまあまあ普通の奴だから気にすんなあいてっ。なんだよ仁王。
仁王君ってかっこいいよね。あ、ほら柳生君の隣にいる…そうそう。え、知らないの?二人ダブルス組んでるんだよ。なまえは柳生君?ふうん?柳生君もだけど仁王君狙ってる子何気いるらしいんだよね。なまえは?あー幸村君かあ。うんわかるわかる。でも幸村君て確か、
みょうじさん、こんにちは。丸井君と仁王君はいますか?ああそうですか。いえ、部活の連絡があったもので。いえ、大丈夫ですよ。話してませんでしたっけ?仁王君はあれでもダブルスなんです、なんて言ったら失礼ですよね。意外ですか?そうかもしれません。我が強過ぎる部分もありますが良いパートナーです。ええ、普通に仲も良い方だと思いますよ。
「…………?」
薄暗い部屋。まだ陽も上がっていない時刻。
携帯のアラームが鳴る前に目が覚めるなんて珍しいこともあるものだ。時間を確認してもう一度布団を被るが何故だか寝付けない。
まったく。どうして夢でまでいけ好かない人物のことを振り返らなければいけないのか。友達と同じ部活で、友達の好みのタイプで、友達とダブルスを組んでいる彼と直接話したことは考えてみればあまりない。同じクラスだけど機会がなかったのか挨拶だって数えるほど。にも関わらず彼のことを悪い意味で意識してしまっているのはやはり根本的に苦手だからなのだろうか。しかし彼の話をする友達はみんな彼を好いているように見える。欠陥があるような人物には感じられない。
私はなんで彼が嫌いなんだろう。
ふと浮かんだ素朴な疑問はいつの間にか落ちた意識とは違い、戻ってくることはなかった。