自分の外見や態度に偏見を持たれることを理解出来るくらいの自覚はあった。けれど交友関係に難色を示されたなことがかったので気にもしなかった。筈なのに。彼女にはそう接されることが寂しかった。笑えば可愛いのに、と。笑ってくれたらいいのに、と。
頑なそうな意思の宿った瞳が幸せそうに光を灯す、あの目にすべて奪われて捕まった。単なる一目惚れだったのかもしれない。
神様とやらは底意地が悪いのか嫌に気まぐれで、彼女は自分を気持ちいいくらいに嫌ってくれていた。
近付いてもぴしゃりと線引きされる関係。どうしようもなく行き場を無くして溢れていく気持ちに嫌気が差していた頃、なんの偶然か彼女と接する機会が出来た。長かったような短かったような、ただの平行線が歪ながらも交わった。やはり神様は大層気まぐれである。今更どうしろと。頭ではわかっているのに彼女が好きで好きで、どんな形でも僅かでも繋がりを離すことは出来なかった。
雨の日が、たまらなく好きになったのはみょうじのおかげ。そんな彼女の態度が最近変わった気がする。以前は俺の顔を見ようものなら見なかったことにしようと目を逸らし、声を掛ければ威嚇して毛を逆立てて。あの頃に比べれば今の関係は奇跡に近く、目眩を覚えた。
「みょうじ、」
「なに?」
以前と変わったと思うのは俺の目を見るようになったことと、
「雨、降らんかの」
「…部活がなくなるから?」
必死に可愛くない素振りをする嫌味に照れ隠しが伺えるようになったこと。可愛いなあ、と微笑ましくなる自分にも大分余裕が出てきたようだ。
俺が笑うと、みょうじは困ったように瞳を伏せる。
何かの弾みで好きと言ってしまいそう。横を歩く細い腕を掴んでしまいそう。
恋人になれないならせめて友人として彼女の側にいられはしないだろうか。もっと辛いだけなのに、そんなことを考えて空を仰ぐと憎たらしい程の晴天がいい気になるなよ、と釘を刺すように自分を照らしていた。