部活を終えた帰り道、横を歩く彼女に初めて歩幅に合わせた時、男女の違いを遅かれながら実感した。彼女は当たり前に自分より脆くて弱い。繋いだ手が小さいのも食べる量が違うのも、当然過ぎて意識したことがなかった。何かあった時は自分が守ってあげるんだ。そう思った。
彼女には何もかもが甘くなってしまう。自分は何事にも馬鹿真面目だと自覚はあって、規律があればそれを順守して自分の中の形式ばった万人が頷くだろう常識に沿って生きている。筈だった。それなのに彼女が横に首を振れば簡単に覆ってしまうから律することが無意味に思えた。誉められたことではないのに、そんな自分に投げ掛けられる言葉が色の良いものばかりだから参ってしまう。
もう少しだけ、もう少しだけ。
今までの自分なら到底有り得なかった、言葉を選ばす言うなら堕落した考えが浮かび、わがままを言うことが増えた。彼女が嫌な顔ひとつせず頷くから馬鹿な男は調子に乗ってしまう。
絡めた指を強く握って、抱き寄せた感触を忘れないように。必ず明日はやってくるのに待ちきれず別れを辛く惜しむ姿には閉口するしかない。あまり遅くなると彼女が心配だから、とその唯一にして最大の理由のお陰でやっと手を離すことができる。まったく呆れてしまう。
門限が特にある訳ではないが、自分への言い訳として歯止めとして、家に連絡を入れる。こうして真面目で堅物な以前の自分を守ろうとしているがそれもいつまでもつか。

8時には戻ります。夜ご飯は先に食べておいて下さい。

だって彼女が変わっていくことは悪いことじゃない、なんて言うものだから。



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