君を、呼ぶ。


「なまえ」


君が、答える。


「ん?何ー銀ちゃん」



これが幸せだ。







「ちょっとこっちおいでー」

万事屋のソファに座って両手を大きく広げる。


「なんで?」

「や、いいからさ。ちょっと」


今万事屋には俺となまえしか居ない。
万事屋になまえが住むようになってからかれこれ3ヵ月になるが、こうして2人っきりになれたのは数えるほどしかない。

当然、こっちとしてはずっといちゃつきたいのを我慢してるからいろいろ溜まってるわけであって(変な意味じゃねーぞコノヤロー)こんな時くらい甘い雰囲気になりたい。


「ほら。おいでー」

「もーどうしたの?」


くすくすと笑いながらも大人しく近付いてきたなまえの腕を引っ張り俺の腕の中に閉じ込める。


「ちょっ、びっくりした」

「あーやっぱいーわ」

「何が?」

「お前。抱き心地最高」


そう言って更に強く抱きしめればなまえはバカ、と照れたように笑って俺の背中に腕を回す。


「これじゃコアラだよー」


くすくすと楽しそうに笑うなまえの長い髪を指に絡める。抱きしめてるなまえからはめちゃくちゃいい匂いがした。


あ、これちょっとやべーかも。
いやいや俺の理性の問題ね。


慌てて少し離れようと腕の力を緩めるとなまえが俺の胸板からぱっと顔を上げて、嬉しそうに笑った。


「こういうの、幸せだね」


可愛すぎんだよチクショォォー!!


俺は心の中で絶叫してなまえに触れかけた手を強く握る。


危ねー今やばかった。
いや現在進行形でやばいんだけど。
なんか心臓の辺にばきゅんってきたからね!あれずきゅんだったか?
あーもーとにかく!!


「俺もすっげー幸せ」


そう言ってまたなまえを力いっぱい抱きしめたら苦しいよ、なんて背中を叩かれて渋々離す。


嗚呼幸せだ。

俺今すっげー幸せ。


「銀ちゃん、」

「ん?」


優しく呼ばれて腕の中のなまえに視線を落とせば


「こんなふうに、ずっと一緒に居れたらいいね。」


恥ずかしそうに、でもしっかりとした声で言われて一瞬意識が飛んだ。


こんだけ可愛くて我慢しろっつーほうがムリだろ。


「なまえ」


名前を呼んで顔を上げたなまえにゆっくりとキスを落とす。



「当たり前だろー。嫌だっつっても離さねーから」


柔らかく微笑みながらそう言って頬を撫でてやる。
想いが溢れてどうしようもない。



「…好き」


おいおいタイミング良すぎだろ。
俺が言いたかった言葉は俺より先にお前の口から出てきた。



「あーもーマジで好き」


緩む頬を抑えきれずにそのままゆっくり頬に手を添えて再びキスをする。




こんなにもこんなにも愛しいんだ。
愛してるんだ。


どうやったら伝わる?
どうしたらお前に伝えられるんだろうな。


俺はお前が好きだ。
好きで好きで愛しくてたまんなくて

なぁ、


全部お前にやるよ。








言葉じゃ足りないくらいの愛を君にあげよう


(お前に貰って欲しいんだ)







俺も、お前に貰ってるから。



120619 再録