※えろ注意






「ちょっと…離してよ」


ギリリと締め上げられた両手首はきっちりと私の頭上にまとめられている。相手は片手だというのに、どんなにほどこうと力をいれてもびくともしなかった。


「ねぇ、聞いてるの?離しなさいって言ってるのよ、涼太」


いつもなら、このくらい強い口調で言えば、年下の彼はいつだって従ってくれる。眉をへにゃりと下げて、なにか言いたげな眼差しを向けながらも、それを飲み込んで、私に従う。
それが、いつもの涼太なのに。


「……」


今日の涼太はおかしい。顔を俯かせたまま、私の声なんて聞こえてないみたいに、壁に私を押し付けてる。
これは、どう考えても機嫌が悪い。怒ってるのかもしれない。


「ねぇ、涼太…。怒ってるの?」


恐る恐る聞いてみると、捕まれている腕に力がこもった。ただでさえ先程からずっと押さえ付けられてるのに、増した痛みに唇を噛んで耐える。


「怒ってるの?…なんて、よく聞けるっスね」

「…涼太?どういう…んっ!」


俯いたままだったけど、漸く涼太が返事をしてくれた。ほっとしながら会話をしようと口を開こうとすると、突然涼太の唇で口を塞がれた。


「ちょっ…んぁ!まっ…んっ、んん…!」


制止の声をかけようにも、途切れることなく口内を蹂躙されて思うように喋れない。それどころか、息さえ苦しくて、じわりと生理的な涙まで浮かんでくる。
そのまま、いつもとは違う、乱暴なキスが長く続いた。







「…ねぇ、なまえサン?」

「はぁ、はぁ…、っぁ…」


漸くキスが終わったと思ったら、涼太はそのままするりと私の服に手をかけた。力が入らずぐったりしているうちに、簡単に脱がされていく。


「オレがなんで怒ってんのか、ほんとにわかんないんスか?」


その声は珍しく一瞬だけ沈んでいて、表情は見えなかったけどきっと涼太が泣きそうな顔をしてるんだなと思った。
それでも、彼が怒った理由が、私にはどうしてもわからなくて。


「ごめ、ん…わかんない。…教え、て?」


まだ乱れている息を整えながらも、涼太にそう伝えた。途端に、涼太が今までずっと俯かせていた顔をあげた。


「…もー。仕方ないっスね。なまえサンてほんとそーゆーとこ鈍感なんだから」


涼太は、笑っていた。とてもいい笑顔で。
私はその笑顔を見て、背筋がぞっとした。

これ、ダメなやつだ。すっごい嫌な予感。


「りょ、涼太…?」

「仕方ないから…オレが教えてあげるっス♪」


涼太はにこやかに笑いながら、いつの間にか涼太の制服のネクタイで縛られていた私の両手を掴むとそれをベットにくくりつけた。


「絶対に忘れないように、たっぷり体に教えてあげるんで」


モデルの撮影の時以上にイイ笑顔で、涼太は私の上に跨がった。


「え、や、ちょ…!冗談、冗談だよね?」


私は涙目になりながらも必死で説得を試みる。けど、涼太は全くこちらを見ずに、なにかをごそごそと取り出した。


「貰ったはいいけど使うの嫌がるかなーと思って隠しといたんスけど…今日はお仕置きだからたっぷり使わせて貰うっスね!」

「へ?…な、なにそれ!?」

「なにって…大人の玩具ってやつっスよ?なまえさん見たことないんスか?」


大人の玩具片手に爽やかな笑顔でこちらを見る涼太に目眩がする。なんとか逃げようともがいても、しっかりと縛られた両手と上に乗っかってる涼太の重みで全然逃げられない。


「なまえサンも楽しみにしてくれてるみたいで嬉しいっス。じゃ、まずこれいきますね〜」

「な、やだ、やめっ…ひゃあっ!!」


ブーンなんていう電子音の後、電気が走ったような快感に思わずのけ反ってしまった。いきなり秘部に押し当てられたそれはたぶんローターというやつで、普段そんな振動を与えられることのない場所は敏感な反応をしてしまう。


「やっ、やあぁ…!やめっ、…っ、うぁっ!」

「うわー、イイ反応。もう濡れてきてるし…なまえサンて、実はこーゆーの好きなんじゃないスか?」

「ちがっ…あっ、んぁ!」

「違わないでしょ?こんなに悦んでるじゃないスか〜」


ほら、といいながらさらに振動を強くされて、どんどん体が熱くなっていく。
やば、い、このままじゃ…


「あれ?もしかしてイキそうなんスか?」

「ッ…!!ちが…あっ、ひぅっ!」

「そんな蕩けた顔と甘い声で言われても、信用できないっスよ〜?」


涼太はすごく楽しそうに笑いながら、どんどん私の体を苛めて追い詰めて、昂らせていく。


「やっ…!も、ダメ…、っ…りょ、ぉたぁっ…!」

「あ、やば」


突然、かちりと音がして刺激がなくなってしまった。考えたくもないのに、あと少しだったのに、なんて言葉が頭のなかに浮かんでしまった。
まだじくじくと疼く体と荒い息のまま、涙目で涼太を睨む。


「な…、んで…」

「言ったでしょ?お仕置きだって。そう簡単にイカせるわけ…」

「違う!!」


堪えていた涙は、怒鳴り声と共に溢れだしてしまった。本格的にボロボロと泣き出した私を見て、涼太がぎょっとした顔をする。


「違うよ!!なんで…、っこんなこと、するの?…って、聞いてるの!!」

「なまえサン…?」

「お仕置き、とか、言われても…私、涼太が何に怒ってるのか、全然、わかっ…、わかんない、し、」


息が整わないのに怒鳴ったり泣いたりしてるせいか、うまく喋れなくてもどかしい。涙のせいで、涼太の顔もはっきり見えない。


「こんな、こんなやり方…、私、すっごく、やだ!」

「なまえさ…」

「涼太の考えてること、なんて…言ってくれなきゃ、わかんない、でしょ…!!」


涙と鼻水のせいでなんかもういろいろ苦しい。心も。
涼太が私のことこんな風に扱うことなんて今までなかった。あんな無機質な道具で遊ばれて、私が涼太の玩具にさせられたような気分になった。


「…なまえサン、」

「っ…やだ、やだやだ、触んないで…!」


逃げられないけど、せめてもの反抗に思いっきり顔をそらす。絶対に見てやらない。涼太の顔なんて、見たくない。
それなのに、涼太はいとも簡単に、そっと両手で私の顔を包んで、真正面に向き合うようにしてしまった。


「バカ、バカ涼太!触んないでってば!顔見たくない!」

「なまえサン…ごめん、ごめんね」

「や…んっ、…やだ…許さな…んんっ…!」


私の怒鳴り声も無視して、涼太は今度は優しく啄むように、私にキスをした。何度も、何度も、謝りながら。



5分くらい経って、やっとキスと謝罪の雨は止んだ。それだけで随分とほだされてしまった私は、視線は合わさないものの顔もそらさず、おとなしく涼太の下にいた。


「ねぇ、なまえサン。ほんとにごめんね?嫌がること、もうしないから…」

「…………」


ふてくされた顔のままぼんやりと天井を見ていたけど、涼太の言葉につい、涼太の方に視線を向けた。


「オレのこと、嫌いにならないで…?」


そこには、いつも通りの、泣きそうで、情けなくて、そして愛しい顔をした涼太がいた。


「…これ、外して?」

「…はい」


腕の拘束をほどいてもらい、両手が自由になったところで、ごそごそと涼太の下から這い出る。涼太も大人しく従ってくれて、ベットの上で向かい合う形になった。


「…涼太、」

「っ…!」


涼太の名前を呼んで手をあげると、咄嗟に涼太は目を瞑る。私はそのまま、あげた手を涼太の頭の上にぽんと置いた。


「…へ?」


叩かれるとでも思っていたのか、間抜けな声をあげて涼太が目を開ける。私は頭の上に置いた手を、そのまま左右に動かした。


「別に、もう怒ってないよ。それより、涼太が怒ってた理由を知りたいの」

「うう…なまえっち…」

「なまえさん、でしょ?」


涙目になった涼太の鼻を摘まんでやると、へへっと笑いながら小さな声でなまえさん、と呟いた。


「よろしい。…それで?」

「え?」

「怒ってた理由!」

「そ、それは…」

「言えない、なんてわけないよね?」

「…はい…」


年上らしく諭してやれば、涼太は突然ぎゅっと私に抱きついてきた。そのまま、耳元で声が響く。


「なまえさん、今日は仕事の飲みだったんでしょ?」

「うん。それは前からいってたよね?」

「…それは知ってるっス。…けど、まさか上司に送ってもらうとは思わなかったっス」

「あー…まぁ、車出してくれるっていうから」


拗ねたような口調で語られたのは、拍子抜けするほど簡単なことだった。要するに、上司に嫉妬したらしい。


「酔った女を車で送るなんて言う奴に、下心がないわけないじゃないっスか!」

「いやナイナイ。上司だし」

「上司だからこそ、ってこともあるんスよ!上司だろうとなんだろうと、男はみんなオオカミなんスから」

「なにそれ」


思わず笑ってしまった私に、笑い事じゃないっス、とさらに拗ねたような声で言う涼太。

背中に回した手でぽんぽんと宥めてやれば、余計にきつく抱き締められた。


「…それに、」

「ん?」

「…オレがもうちょっと大人だったら、車でなまえさんのこと迎えに行けるのに…って思ったら、なんか悔しくて」

「涼太…」


ぽつりと呟かれた涼太の本心は、私の心にも響いた。いつだって、私たちがどうしても気にしてしまうのは、歳の差ってやつで。
社会人と学生。立場が違うことで、私にしてやれないことが多いと涼太はいつも気にしていた。

…そんなの、気にする必要ないのに。


「ねぇ、涼太」

「…なんスか?」


私の首筋にぐりぐりと頭を押し付けてくる涼太に、くすぐったいよ、と言いながら、少しだけ体を離す。


「私は、車持っててもお金持っててもイケメンでも社会人でも関係ないの。黄瀬涼太じゃなきゃ嫌なの」

「なまえさん…」

「ちょっと早とちりで、嫉妬深くて、子供っぽくて、でも時々誰より大人びた顔してて、本当は努力
家で、好きなものにひたむきで、バスケを頑張ってる。そんな、今のままの黄瀬涼太が、私は好きなんだよ?」

「っ…!」


ちゃんと、伝わるように。しっかり目を見て、そのままこつんとおでこを合わせた。とくり、とくりと、かすかにこめかみから微かな振動が流れてくる。この拍動は、とても心地良い。


「だから、気にしないで。むしろ、私の方が、こんな若い男の子たぶらかしちゃってと申し訳ないくらい。涼太なら選り取りみどりだろうに…」

「…何言ってんスか」


あはは、と苦笑いしながら離れると、ぐいと顎を掴まれて至近距離で見つめあう。そこには、さっきまでの弱々しい顔はなくて。
あるのはただ、ひたすらに眩しくてかっこいい、私の大好きな顔だった。


「なまえさん以上に魅力的な女なんていないっスよ」

「なに言って…」

「オレが好きなのは、可愛くて、意地っ張りで、あんま素直になれなくて、弱味とか人に見せるの苦手で、すぐ強がっちゃって、でもしっかりした芯を持ってて、強くて優しい。そんな、オレだけのなまえさんですから」


にっこりと笑った涼太は、私がなにかを言い返すまもなく、またキスの雨を降らせてきた。優しくて甘くて、とろけてしまいそうなキス。


「…オレ以外のことなんてなんにも考えられないくらい、オレでなまえのこといっぱいにしたい」


真剣な瞳でそう告げられてしまったら、私が返せる答えは1つしかないわけで。


「…じゃあ、涼太も、わたしでいっぱいになってね?」


それでも、悔しいから素直には頷いてあげなかったけど…涼太の方が1枚上手だったみたい。







ココロの占領







「もう、とっくになまえでいっぱいっス!」



当たり前のように言われた言葉に、私は顔を赤くして黙りこむことしかできませんでした。






お友達に送ったえろ黄瀬第2段でした!



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