6月6日 6:00


「とりあえず自己紹介でもするかい?そうだなぁ、まずはスリーサイズからでも」
「えーと、上から…って初対面なのに何言わそうとしてんだ!」



とりあえず部屋から追い出して着替えてリビングに戻ったら投げ掛けられたのはこの言葉。全く信じられない不審者だ。



「…とりあえず、朝ごはん食べます?」



気にくわない。
だけどだからって(勝手に来てたけど)お客様に対して全くおもてなしをしないわけにもいかない。
渋々食べるかと訊ねたらピエロがぱちくりと目を瞬かせた。



「…くくっ」
「なんすか気持ち悪い笑い方しないでください」
「いや、キミって素直じゃないんだね」
「何を勘違いしてらっしゃるのかわかりませんが私は仕事がありますので食べたら行きますよ」



適当に用意した朝ごはんを出して、手を合わせてもくもくと食事を進める。何故かピエロは目の前の朝ごはんを食べようとせず私の顔をガン見してニヤニヤしていた。
気持ち悪いからシカトだシカト。



「ごちそうさま」



結局私が食べ終わる頃になってピエロは食べ始めた。えらくのんびりしてるなあ。



6月6日 7:00


「やば、そろそろ出なきゃ!」



通勤に1時間ちょっとかかるからいつも早めに出るようにしてる。名前すら知らないピエロはまだゆったりとご飯を食べていた。



「昼は適当にあるもの食べてくださいね」
「ウン☆」
「じゃあ私行くんで」



バタバタと準備をしてリビングを出ようとすると「ちょっと」と呼び止められた。



「なんですか!」
「僕、ヒソカっていうんだ◇」



唐突すぎて何を言われたのか理解するのにちょっと時間がかかった。



「…私はなまえです」
「そう、なまえね」



ヒソカは機嫌良さげにトランプを弄ってる。
チラリと腕時計を見たら本格的に時間がギリギリだ。



「じゃ!」
「あ、なまえ」
「ああもうなんですか!」



再び呼ばれてちょっとイライラしながらヒソカを見れば彼はにっこりと綺麗に笑った。



「行ってらっしゃい」



あんまり綺麗に笑うもんだから、ついぽかんと見つめてしまう。



「………行かなくていいのかい?」
「はっ!やばっ!行ってきます!!」



慌てて我に返ると急いで家を飛び出した。