「っ…!」

「くそっ…届かねぇ!馬鹿野郎!」


強面のお兄さんに怒鳴られて、更に体が縮こまる。3人も充分怪しいけど、この強面のお兄さんなんて怖い上に怪しい。独眼竜さんだって、変な恰好してるし刀を6本も持ってる。しかも二人とも雷がバチバチ出てるし…人間じゃないよね。


「さ、三人衆さん」

「なんだ」
「どうした」
「何用だ」

「あの…がんばってください」


何言ってるんだろう、私。自分をどこかに連れてこうとしてる人たちなのに。私を盾にしてる人たちなのに。

化物みたいに強い雷人間さんたちに立ち向かう私と同じような普通の人間だから、応援したくなったのかな。それとも、盾にしてるように見えて、いざ刀が私に当たりそうになると必ずかばってくれることに気付いちゃったからかな。

私の応援を聞いて、三人衆さんはちょっとだけ驚いた(ような気がした)。それから、ちっちゃい声で「「「ああ」」」と返事が聞こえた。
それがなんだか嬉しくてニヤニヤしていると、かなり顔をしかめた独眼竜さんと目があった。


「shit…女、てめぇそっち側の人間だったのか」

「そっち側とかあっち側とかわかんないですけど…少なくとも、貴方たちよりは三人衆さんの方が安全かなって」

「HA!そうかよ!なら…遠慮せずてめぇごと斬らせてもらうぜ?」

「へ?」


宣言直後から、独眼竜さんたちの動きに容赦がなくなった。三人衆さんは私が盾にならないとわかったからか邪魔だったからか、担いでいた私をぽいと放るとそのまま戦いのほうに集中してしまった。


「ええ…私、どうしたら…」


困惑していると、目の前にヒラヒラと黒い何かが舞い落ちてきた。1つ拾ってみると、どうやら黒い羽のようだ。


「わ、綺麗な羽…」


私がぽつりと溢した声に、三人衆さんが耳ざとく反応する。


「ようやく」
「来たか」
「風の悪魔」
「そこの」
「女を」
「主のもとへ」


戦いながら私に向かってそんなことを言う三人衆さん。風の悪魔?私?


「うひゃあっ!」


なんのことだと首を捻っていると、また突然誰かに担ぎあげられてしまった。あれっ、黒い羽付いてる…この人が風の悪魔!?


「チッ…伝説が出てきやがったか」

「政宗様、あの娘のことは放って、三好三人衆と松永を潰すことをお考えくだされ」

「shit、わかってるよ小十郎。女、また会う機会があれば…覚えてろよ?」


ニヤリと笑われて背筋に何かが走った。思わず風の悪魔さんにすがり付くと、風の悪魔さんがぽんぽんと頭を撫でてくれた。風の悪魔さんて、いい悪魔なのかな…?


「風の悪魔」
「その娘を」
「頼んだぞ」

「三人衆さんっ…!うあ、」


三人衆さんに手を伸ばすと、首の後ろにトンっとなにかが当たった。
どうやら風の悪魔さんの仕業らしい。


「死な、ないで…」


そう一言呟いて、私の視界はブラックアウトした。


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