「も…ムリ…」


プルプルと震える腕を抑えながら机に突っ伏すなまえ。時刻は昼を少し過ぎた頃で、彼女は言われた通り、思い付く限りの自分の世界との違いを紙に書き出し終えたところだった。


「ほぉ…こんなもんなのか」


10枚ほど重ねられた紙を手に取りながら、クロスは興味深げに声を漏らす。
隣でへたばる弟子にチラリと目を向けると机に突っ伏している頭をがしがしと撫でてやった。


「いた、いだだっ!痛いですって師匠!ゴリゴリいってる!」
「せっかくオレが労ってやってるんだ。ありがたく机にキスしてろ」
「嫌がらせ以外の何物でもないじゃないですか!」


なまえが涙目になってがばりと机から頭をあげると、クロスは機嫌良く笑いながら再び紙に視線を落とした。


「まったく師匠は…!」


横暴すぎる!とぶつぶつ文句を言う少女に向かって、クロスは思い出したように言葉を発する。


「そう言えばなまえ。お前今日からイノセンスの修行に入るぞ」
「あーはいはいイノセンスの…って、ええええ!?」
「煩え」


ギャーギャー喚くな、とクロスが掌で口を抑え、ついでに顔を鼻先が触れるほどの距離に近付けなまえに囁く。


「…いい子にできるな?」
「っ…!」


余りにも色気をたっぷりと含んだ声になまえは一瞬くらりとする。
は、反則すぎる…!
そのまま真っ赤な顔でぶんぶんと音がするほど勢い良く首を振ると、クロスは機嫌良く手を離した。


「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「