最近、アイツの様子がおかしい。
いや、どこかしらおかしいのは以前からだが、なんだか落ち着きがないし上の空だし、常にそわそわ何かを気にしているように見える(とんでもなく気持ち悪い)
それに、アタシの勘がはっきりと異常を告げている。


「…どうしたんだい、マチ?そんなに見つめられると興奮しちゃうじゃないか★」

「死ね。」


ぞわっと全身に鳥肌が立ったのでとりあえず拒否の言葉を投げつければ、奴―――ヒソカは、楽しそうにくつくつと喉を鳴らした。

おかしい、絶対に。

またも募る違和感。何故こんなにもヒソカは上機嫌なのか…?
ふと激しい爆音が響いてはっと我に返る。

そうだ、今は仕事に集中しなければ。

今は旅団の仕事(つまりは盗みと殺し)中で、アタシとヒソカは美術館の外の見張りだった。嫌な奴とペアになったもんだと舌打ちをしたが、これも仕事なのだから仕方がない。

気配を感じて目を凝らせばゆらりと立ち上る火煙の中から見慣れた姿が複数飛び出してきた。


「マチ、ヒソカ、居るか?」

「ここだよ団長。」


ストンと木の上から降り立てば、一瞬鋭い眼差しが向けられる。仕事用の団長の顔だ。


「よし、全員アジトに戻るぞ。」


盗品を小脇に抱えた団長の声に従って、全員が素早くアジトまでの道のりを疾走した。











「あーあ、今回も暴れたんねェなァ。」

「全く手応えのねェ奴らばっかりで逆に疲れるぜ。」


アジトに到着すれば各々が好き勝手に行動し始める。
欠伸をかみ殺すウヴォーと隣りでぽきぽきと肩の凝りをほぐすノブナガはアジトの広間に適当に腰を下ろした。


「ご苦労だったな。」


団長が盗品を丁寧に瓦礫の上に置きそう告げれば、宴会でもやるかとどこからともなく声が聞こえ(多分ノブナガやウヴォー辺りだね)結局皆が広間に腰を下ろした。


「クロロ☆」

「どうしたヒソカ?」


が、ヒソカだけは腰を下ろすことなく団長に声をかける。
…下手なこと言ったら殺してやる。


「今日の仕事はもう終わりだろう?」

「ああ。」

「なら、僕は帰るよ◆」


ヒソカの言葉にぴくりと眉を動かす団長。
それもそうだ、ヒソカはいつも自分はあまり飲まないが宴会などがあるときは居座り続け、端のほうで薄気味悪く笑いながら1人でトランプを弄んでいるんだから。


「どうした?何か用事でもあるのか?」


団長からの問いにヒソカは嬉しそうにニンマリと笑った。


「最近、子猫を飼い始めてね★僕が帰らないと寂しがるんだ◇」


ぶっ!と盛大な音がして、呑んでいた者のうち半数以上が吹き出していた。
アタシも驚きすぎて思考が一瞬止まった気がした。


「こっ、子猫だァ!?」

「ヒソカが子猫…。」


煩く叫ぶフィンクスとは反対にシャルナークが静かにぽつりと呟いた言葉で、皆大体同じ想像をする。
ゴツい腕の中にいる子猫に、ヒソカが頬ずりをしている場面。


「ぶはっ!」

「あひゃひゃ、ひっ、ヒソカが子猫!」


こりゃ傑作だ、と大爆笑するノブナガやフィンクスとは違い、アタシやシャルは自分がした想像に顔を青くする。
だってしょうがないだろ!気持ち悪いにもほどがある。


「みんな酷いなァ◇そんなに僕に子猫は似合わないかい?」


口ではそう言いながらも楽しそうに肩を震わせるコイツはやっぱり相当な変態だ。


「まあ、そういうわけだから僕は帰るよ◇」

「っ…ああ、わかった。」


あの団長ですら笑いを堪えながらヒソカを見送る。
ヒソカはじゃあ☆とご機嫌な声でアジトの窓から飛び降り帰って行った。

しばらくの間アジト内は静寂に包まれ、ドッと笑い声が起こった。


「あ〜、やべ、ツボった!」


涙目になりながらひいひい騒ぐ連中を横目に、アタシと団長だけが真面目な顔をして何かを考えていた。


「おいマチ、お前はどう思う?」


不機嫌に眉をしかめていると団長に呼ばれる。話はもちろんヒソカのことだろう。


「アタシは…なんか怪しいと思う。アイツは何か大事なことを隠してる気がするんだ。」

「勘か?」

「ああ。」


小さく頷くとお前の勘は頼りになるからな、と言われ少し嬉しかった。


「よしわかった、今後少しヒソカに注意しておこう。」


団長はそう言うとバカ騒ぎしてる奴らから離れ盗品を大事に腕に抱いて広間を出て行った。その後ろ姿を見て、なんだか少しだけ胸騒ぎがした。
変に騒ぐ胸を抑えてヒソカが出て行った窓を睨み付ける。


アイツはやっぱり大嫌いだ。






 

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