「…大丈夫か?三郎になんて言われたんだ?」 「え、あ…いや、大丈夫だ。心配ありがとう」 あんぐりと口を開けて三郎の去った方をじっと見つめてたから、俺はちょっと心配になって声をかける。すると、ふんわりと柔らかく微笑まれてちょっとドキッとした。さっきから思ってたけど、コイツって女みてぇだよな。 ついさっき知り合ったばかりのなまえは、今日忍術学園に転入してきたらしい。しかも、俺たちと同じ五年ろ組に。 「まさか同い年とはなぁ」 ついなまえをじろじろと見ながらそう言えば、なまえは苦笑した。こんな細くてちっこいから、てっきり年下だとばかり思ってたぜ。 「いや、実は私の年齢だと六年生になるらしいんだが…ちゃんと勉強なんてしたことないから、座学があんまり得意じゃないんだ。それで学園長先生が五年に入れって」 「へぇ〜。なら、俺たちの一つ上なんだ、な…?って、はああああ!?」 「おわ、何をそんなに驚いてんのハチ」 六年生!?この体型でか!?思わずさっきよりもなまえの体つきを凝視しちまう。兵助もあんまがっちりしたほうじゃないし女顔って言われてるけど、こんなに細くない。なんていうかコイツは線が細い。 「…てか、見すぎ」 「え、ああ、わりぃ。つーかお前こそちょっと口調変わってないか?」 「ん?ああ、ごめん。なんかハチと喋ってると、結構砕けた口調になってるな」 慣れると口が悪いから、とはにかむなまえはどうやってみても女みたいだ。ただ、さっき肌着の上から触った時には、胸はなかった…はず。でもなんだか柔らかくてすげぇいい触り心地だった…って、俺は一体何考えてんだ!! 「大丈夫か、ハチ。顔真っ赤だぞ」 「だ、大丈夫だ、大丈夫!」 「はは、変なの。ハチって面白いな」 「…お前、本当に笑ったら女みたいだよなぁ」 なまえの笑顔を見て、つい本音がポロリと出ちまった。ハッとしてなまえを見ると…やべ、怒ってる? 「わ、悪い!つい本音が…じゃなくて、なんつーか、その…」 「ハチ」 「嫌な思い、させちまったよな…?」 恐る恐るなまえの顔を見ると、なまえは何故だか笑っていた。あれ?怒って…ないのか? 「いいよ、別に。悪意のある悪口じゃないみたいだし」 「な、当たり前だろ!」 「うん、ありがと。だからハチの今の発言は許す」 「お、おう。ありがとな」 なんか、本当にコイツ男前な性格だな。女顔だけど、すげぇいい奴だ。 またにっこり笑われて照れ臭くて顔を反らすと、何故かぐいっと頬を挟まれて無理矢理なまえのほうを向かされた。え?なんかほっぺためちゃくちゃ痛てぇんだけど。 「ただし、次に私のこと女みたいだとか言ったら…容赦しないからな?」 「お、おふ!」 目がまったく笑ってねぇぇぇ!やっぱり怒ってたんじゃねぇか!! 「そういえば、捕まえた毒虫ってどうするんだ?」 なまえは俺の顔からパッと手を放すと何事もなかったみたいにそう聞いてきた。ちくしょー、俺はまだほっぺたのヒリヒリが取れてねぇってのに。って…あ。 「ああーっ!すっかり忘れてた!委員会の途中だったんだ!」 「委員会?」 「悪いなまえ!急ぐからまたな!」 「あ、ああ。あまり慌てて転ぶなよ!」 「おう!」 やべー!すっかり忘れてた!孫兵とか一年生たち、大丈夫かな…。 俺は慌てて飼育小屋へと走って行った。 「あ、竹谷先輩だ!」 「悪いみんな!毒虫たちは…」 「僕たちも捕まえました〜」 「でも一匹…」 「ああ、それなら俺が捕まえたぞ」 ほら、と虫籠を見せれば、わぁっと一年生たちが喜ぶ。孫兵なんか涙目になりながら虫籠を抱き締めていた。 「どこに居たんですかぁ?」 「僕たち一生懸命探したのに全然見つからなくて…」 「どこ、って…」 後輩たちの言葉で、ついさっきのなまえの感触を思い出す。なんかアイツ、いい匂いだったし柔らかかったし…正直、三郎が邪魔しに来る前の涙目のはヤバかったよなぁ…。 「竹谷先輩、なんか顔が真っ赤ですよー」 「でも幸せそう…」 「…はぁ、竹谷先輩。一年生の前でそんな顔は止めてくださいね」 後輩たちの指摘(主に孫兵の冷たい視線)にハッと我に返る。また俺は何を考えてんだ…!!! 「ばっ!べ、別になんでもねぇよ!」 「くのたま長屋にでも入ったんですか?」 「いや、それならもっとボロボロになって帰ってくるんじゃ…」 「ああもう!とりあえずこの話は終わり!餌やりの続きするぞ!」 「「はーい!」」 とりあえずアイツは可愛いけど男だし、性格いい奴だし、仲良くできそうな奴だよな!うん。それだけだ! |