「べ、別にお前の為なんかじゃねェからな!」
「あ、うん」
そう叫んで颯爽と走り去って行ったのはクラスメートの高杉くんだ。学校では不良だなんだと恐がられている高杉くんだが、意外と彼は優しかったりする。ただちょっと、素直じゃないだけで。
「どうしよう…」
手に押し付けられていた袋には、今日私が教室で妙ちゃんに好きだと話していたお菓子が入っている。期間限定らしくて近場のコンビニにはなかったんだよーなんて話していたら、帰り道でバッタリ出会った高杉くんにいきなり袋を手渡された。
「ん、」
「え?」
「……やる」
「えっと、なあに?これ」
「…見りゃわかんだろ!」
「あ、これ…」
ガサリと袋の中を見てみれば、私の大好きなお菓子が入っていて。
高杉くんはそっぽを向きながらもなんだかそわそわしていた。
「やるって言ってんだろ」
「いや、でも悪いし」
「いいんだよ。別に、煙草買いに行ったらたまたまあったからたまたま買っただけだし」
「あ、じゃあお金、」
「要らねェよ!お、女から金取る趣味はねェ」
「えーと、じゃあ、遠慮なく。私これ好きなんだ!」
「そ、そうか」
「ありがとね」
「おう。じゃァな」
高杉くんは早口でそれだけ言い切るとスタスタと足早に歩き出して、途中でピタリと足を止めて戻ってきた。そして、冒頭の流れになる。
「どうしようかなぁ…」
にやける頬を抑えながら、私はもう一度呟いた。毎回毎回、よくもまぁいろんな言い訳を用意してくるもんだ。高杉くんほどわかりやすい人もそう居ないと思う。
だけど、私はそんな高杉くんが可愛くて仕方ないんだ。
そう言ったら、妙ちゃんたちには変な顔されちゃったけど、まぁいいか。
バレバレな君
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本当は「べ、別に誕生日プレゼントってわけじゃねェからな!」って言わせたかったけどお菓子だったので却下。こんな祝われ方も可愛いよね。