「ねえねえ、これにしよっ!」

「あァ?勝手にしろや」


私は今半端なくテンションが高いです。なんてったって、今日は彼氏の家に初お泊まり!
ちょっと無愛想だけど本当にかっこいい彼、高杉くんと付き合えるなんて夢みたいで、未だに実感が湧かないくらい。


「計1200円でございます。」


DVDを大量に借りて、そのまま彼の家へ向かう。ちゃんとホラー映画や恋愛映画、そして泣ける感動的な映画をセレクトしたから、今日の雰囲気作りはばっちりなはず!


「お邪魔します!」

「おー」


彼は1人暮らしだから、特に気兼ねすることもなく家にあがることができた。ちょっと緊張はしてるけど。


「どうする?最初はどれ見る?」

「好きに選べ」


高杉くんはクールに私に返事を返すとソファに優雅に腰を下ろした。かっこ良すぎる…!


「じゃ、じゃあ…これにしよ!」


まずはありきたりだけど感動的な動物のノンフィクション映画で雰囲気を和ませよう。

「高杉くんは、犬とか好き?」


DVDをデッキに入れ、高杉くんの隣りに腰を下ろしながら訊ねれば、小さな声で別に普通、と聞こえた気がした。
そんな高杉くんに少しだけ寄り添うように座ると、感動的な映画が始まった。







「ひっく…ぐす…ご、ゴン太ァァ…!」

「た、高杉くん…?」


この状況はなんだろう。あのクールな高杉くんが涙と鼻水にまみれた顔でゴン太(主人公のペット)の名前を呼んでいる。


「おまっ…タカシてめェェ!ゴン太を捨てんのかァァ!」

「ちょっ、落ち着いて高杉くんん!」

「ゴン太はなァァ、てめェのことが大好きなんだぞ!捨てられても毎日待ってるんだぞォォ!」

「落ち着けェェ!」


主人公(タカシ)が家庭の事情からゴン太を捨てるシーンでは、涙でぐちゃぐちゃな顔のままテレビにつかみかかり、仕方なく私がテレビからひっぺがすはめになった。
本当にコレがあのクールでかっこいい高杉くんなの!?


「ゴン太…ゴン太ァァ…いや、ゴン吉ィィ…!」

「ゴン吉って誰ェェ!」


むせび泣く高杉くんの姿を見て、私の目にも涙が溢れてきました。



涙もろいのもほどほどに!



100207 再録