入場曲が流れて、みんなでスタート地点まで行進していく。私たち3年Z組は白組だ。白組の第一走者は1年C組の子たちで、いろんなところから声援が飛んでいる。私たちは3年Z組だから、もちろんアンカー。
パァンと銃声が響いて、二人三脚が始まった。


「白組がんばれーっ!ああ!抜かれるー!」

「舞、少し声を小さく…」

「キャアアア抜かした!見てみて万斉くん!2位になったよ!」

「…そうでござるな」


万斉くんはちょっと呆れたような顔をしながらも私の煩い応援を止めないでいてくれた。私、こういうのはじっとしてられないんだよなあ。


「ど、どうしよう万斉くん…!あと二組だよ!」

「そろそろ結んでおこう」


あっという間に3年生のペアにバトンが渡ってきて、長谷川くんとハツちゃんが懸命にバトンを受け取っているところが見えた。いよいよ次、だ。


「舞」

「ははははいっ!」

「そう緊張せずとも大丈夫でござるよ」


ふっと万斉くんに笑われちゃうくらい、私は緊張でガチガチになっていた。だって、アンカーなんて責任重大だよ…!
そんな私に向かって、ふむと何かを思い付いたらしい万斉くんは内緒話をするみたいに耳元に唇を寄せた。


「ばっ、万斉くん!?」

「ではこういうのはどうでござろう?拙者たちのペアが優勝したら、付き合って欲しい」

「………へ?」


付き合う?なにに?
耳から入ってきた言葉の意味がよくわからない。混乱した頭のままあうあうと呻いていると、万斉くんがお茶目に笑うのが見えた。
あ、こんな可愛い笑い方もするんだ。


「付き合って欲しい、というのは少々紛らわしかったでござるな。大人気アイドル寺門通のライブに一緒に行かぬか?」

「えっ!お通ちゃんのライブに!?」


何を隠そう、私はお通ちゃんの大ファンだ。でもお通ちゃんのライブはいつもチケットが完売してしまうため、私は生で聞けたことがない。音楽が好きだという万斉くんと以前その話しをしたことがあったけど、まさか覚えててくれたなんて。


「い、いいの!?」

「もちろん。ライブのためにもがんばるでござるよ」

「うん!」


私が万斉くんに満面の笑みを返すと同時に、長谷川くんとハツちゃんからバトンが回ってきた。

この後、私と万斉くんの驚異的な走りにより白組が優勝を飾ったのは言うまでもない。




隣の席の河上くん

優しくて暖かい
お兄ちゃんみたいな男の子