「ん?ああやべ、すっかり忘れるとこだったわ」


先生は裾を引く私に気づくと慌てて教卓に戻っていつも以上にざわついている教室で声を張り上げた。


「おいお前ら、体育祭の種目決めすんぞ!」


ぴたり。
先生の一言で騒がしかった教室がまるで時間が止まったように一瞬で静まり返る。そんな教室内を見渡して、先生はニヤリと笑った。


「ちなみに、例年通り優勝した学校には金一封、そんで今年は最優秀クラスに温泉旅行だ!」

「オォォォォォ!」

「え、温泉旅行?」


俄然盛り上がるクラスにいまいちついていけない。なんで体育祭で温泉旅行?


「姉妹校である集英高校と銀魂高校が、毎年共同で体育祭を催しているのでござる。だから、豪華な特典が付くのでござるよ」

「そうなんだ」


盛り上がるクラスのざわめきの中、河上くんが丁寧に説明してくれた。
どうやら交換学生も、双方の戦力を均等にするという目的から始まったんだとか。


「学校対抗であるから、活躍したクラスには各学校から優秀賞が出るのでござる。そうすれば、皆やる気が出るというものだからな」

「へえ〜。」

「舞、くじ引くネ」

「え?」


河上くんの話に感心して聞き入っていたら、どうやらクラスの話を聞いていなかったらしい。言われるがままにくじを引くと、赤い数字が書いてあった。


「5…、ということは、
どうやら拙者等がペアのようでござるな」

「へ?」


隣りから私のくじをひょいと覗き込んだ河上くんは、自分の持つ小さな紙をピラリと開いて私に見せた。


「あ、5だ」


そこには青色で5という数字が書かれていた。


「ペアも一緒とは…これも何かの縁故。よろしく頼むでござるよ」


にこりと笑った河上くんが指差した黒板には、『男女混合二人三脚』と書かれていた。

体育祭まで、後2週間。