3月、某日。
私は春から通う予定になっている学校の門の前に立って校舎を見上げていた。変な噂の多い学校で少し不安を感じてたりもしたけど、見た目は結構立派で綺麗な学校だった。



ぐるりと校舎を一通り眺めると3階の1番奥の――なんだか他の部屋とやけに離れている部屋の――窓ガラスが割れていることに気が付いた。
何故かガムテープと新聞らしきもので必死に補修してある。


「なんだろ。レクチャールームかな?」


私は大して気にも止めず職員室への道のりを辿りだした。








初めての学校の初めての職員室というのはやっぱり緊張するもので、私は緊張を和らげる為に軽く深呼吸してからドアに手を伸ばす。


「お?」


けど突然ドアが開いて、白衣を着た銀髪の男の人が顔を出した。


「もしかして、笹木舞ちゃん?」

「え、はい」


いきなり名前を呼ばれて驚きつつ、そのやる気のない目を見つめる。
赤く光る其れは決して煌めいてはいないものの、奥底に不思議な光が見えた気がした。


「…先生、綺麗な目してますね」


だからつい何の考えもなくそう言う。
すると先生は本当に目をまん丸く見開いて、それからくつくつと笑い出した。


「っはは、君変わってんなァ」

「先生こそ」


何がおかしいのかもよくわからないまま、ただ職員室の入り口で向かい合って笑い続ける。
端から見ればさぞ異様な光景だろう。


「よし、んじゃ理事長室行くか。ババアが待ってっから」

「え、はい」


ババアというのがは分からなかったけど、とりあえず話しながら先生の後ろについて歩き出した。