9月。 楽しかった夏休みも終わり高校生活も後半にさしかかろうとしている。そうだというのに私は、大変失礼なことをしてしまった。
「よろしく頼むでござるよ」
この度の席替えで隣の席になった見覚えのない彼。もう転校してきて5ヶ月も経とうかというのに、未だに知らないクラスメートが居たなんて!
「あ、の…ごめんなさい!」
「は…?」
突然謝り出した私に怪訝そうな顔をする彼。サングラスのせいであまり表情が見えないけど、あなたが誰か知りませんだなんて言ったらきっと気分を悪くしてしまうに違いない。
「私、もう転校してきて5ヶ月になるのに、まだあなたのこと知らないんです。同じクラスメートなのに名前も知らないなんて…本当に失礼ですよね、すみません!」
それでも私は黙っているのも気が引けて、正直に自分の気持ちを話した。 彼は一瞬キョトンとした表情を浮かべると、すぐ隣に立っていた高杉くんと顔を見合わせて笑い出す。
「ははっ、知らなくて当たり前でござるよ」
「へ…?」
私だけがわけがわからずポカンとしていると、高杉くんが笑いをかみ殺しながら彼をくいと指差した。
「コイツはうちの高校じゃねェよ。隣りの集英高校に通ってる万斉だ」
「万斉…くん?」
聞き覚えのある名前に首を傾げる。確か何度か高杉くんとの会話の中に出てきた名前だ。 うーん、と首を捻っていると万斉くんは笑いながら私に片手を差し出した。
「拙者、集英高校三年G組の河上万斉と申す。晋助とは鬼兵隊というバンド仲間でござるよ」
「鬼兵隊…あ、そういえば高杉くんのお誕生日会に来てた…!」
「そうでござる」
高杉くんのお誕生日だったあの日、確かに集英高校から何人か高杉くんのお友達が来ていた。その中にサングラスをかけギターを持参していた男の子が居たという記憶がパッと蘇る。どうやら彼が“河上万斉”くんだったらしい。
「なんだあ、集英高校…の?」
笑いながら話しかけて、ふと疑問を覚えた。
え、なんで違う高校の人が私の隣りの席に?
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