「もうっ!高杉くんのバカー!」


隣室からなにやら叫び声が聞こえる中適当に着替えを済ませリビングに戻ると、これでもかというくらい山盛りにされたチャーハンがテーブルに置いてあった。
つーか地味な仕返しだな。

舞は未だ赤みの残る顔で俺とは反対方向を見ながら無言でチャーハンを食べている。
やっぱり面白れェ女。


「いただきます」


きちんと席につき合掌してからチャーハンを口にすれば、舞が驚いたようにこちらを見た。


「…なんだァ?」

「高杉くんでもいただきます言うんだね…。びっくりした」

「そォか?」

「うん…ぷっ、なんか可愛い」


つい先ほどまで怒っていたはずの彼女はすでに体をこちらに向け可笑しそうに笑っている。単純な女だなァ、本当に。

しばらくは話しもせずにお互い黙々とスプーンを運ぶ。なぜか舞はそわそわしていたが、特に話しかけてもこなかったので放って置くことにした。


「…食った」

「えっ!早!私まだ食べてないのに…」

「お前ェが遅いだけだろ」

「違うよっ!…てゆうか、全部食べたんだ…」


俺が食べきれないほどついだチャーハンをあっという間に平らげたのが驚きだったらしく、目を丸くして間抜け面をしている。


「はっ、男子高校生の食欲なめんなよ?」

「くっ…!なんか悔しい!」


まさに百面相、と言うのに相応しいくらいコイツの表情はコロコロとめまぐるしく変わっていく。だから飽きねェんだろォな。


「よしっ!私もご馳走様でした」


舞はきちんと合掌すると皿をシンクに持って行く。


「浸けとけ。後で洗うからな」

「わかった」


このやり取りもなんだか新婚みたいだ、とまた無意識に思ってしまって苦笑いが漏れた。

どんだけハマってんだ俺ァ。