「まァ上がれ」


着いたのは小綺麗な一軒家。暖色系の壁の色がアットホームな雰囲気を醸し出している。


「え?此処…」

「俺ん家」

「ええっ!」


どうしよう高杉くん家に来ちゃった!なんで?
1人でパニックになっている私を放置して、高杉くんはさっさと自分の家に入って行く。
え、どうしようさっき上がれって言ってたよね?


「お、お邪魔しま〜す…」


恐る恐る玄関に入ると、上着を脱いだ高杉くんがひょっこりと顔を出した。(あ、ちょっと可愛い)


「何してんだ、早く来い」

「え、うん」


何が何だかわからないままとりあえず言われた通り靴を脱いで上がらせてもらうことにした。


「わ、綺麗」


リビングはシンプルな家具や家電製品が置いてあり、整理整頓されていてとても綺麗だった。


「麦茶でいいか?」

「え、うん」

「座ってろ」


言われた通り、真ん中にある小さなテーブルの前に正座をすると高杉くんが冷えた麦茶を持ってきてくれた。なんだなんだ、高杉くんが優しいぞ!


「た、高杉くん」

「あァ?」

「なんで私此処に居るの?」


やっと学校の補修も終わり愛しい我が家へ帰れると思っていたのに、という嫌みを暗に込めて訊ねれば、それが伝わったのか(やっぱりエスパー?)ちょっぴり睨みつけられた。ひいっ!


「文句あんのか?」

「も、文句っていうか何か用があるのかな〜って思って…」


遠慮がちに言えば、高杉くんはさも当たり前かのようにさらりと言った。


「あァ、勉強教えろ」

「え!?」

「ついでに昼飯作れ」

「ええっ!?」


なんだか大変なことになってしまいました、夏休みのとある1日。