「誰だ?お前ェ」
声をかけても一向に動く気配はない。瞬き一つしないままただ阿呆みたいに俺を見ている。俺もじっと見ていると、その女が結構整った顔をしていることに気付いた。
「どォした?俺に見惚れてんのか?」
相手が見知らぬ顔のいい女なら、口説いてみるのも悪くない。くいと顎を持ち上げてコイツはどんな反応をするのだろうと顔をよく見る。
「…うん。あなたの目、すっごく綺麗」
しかし、返ってきたのは予想外の答えと真っ直ぐな視線だった。恥じらうわけでも嫌がるわけでもなく、ただ真っ直ぐに俺を見つめてくる。
俺はコイツの真っ直ぐな瞳が綺麗だと思った。
「くくっ…お前ェ、面白い女だなァ」
少しずつガヤガヤと賑やかな音が教室に向かって近付いてくるのを聞いて、にやりと口角を上げる。
「オイ、女」
「え…はい」
ガラリという教室のドアが開く音と同時に先程から持ち上げたままだった顎を少しだけずらして、柔らかな頬に口付けた。
「なっ…!?」
「高杉!?」
「てめっ、こらァァ!!」
後ろで響く喚き声を尻目に、俺は未だに呆けている女に向かってニヤリと笑みを浮かべた。
「お前、俺の女になれ」
「「「はあァァ!?」」」
教室中に大ブーイングが響く中、ソイツは顔を真っ赤にさせて静かに倒れた。
「っと、危ねェ」
腕の中で静かに気を失う女を見て、俺は小さく笑う。
コイツを、俺のモンにしてやる。
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