今回俺は席替えで舞ちゃんの隣になった。舞ちゃんが転校してきてもう1ヶ月経つ。漸くこのクラスにも慣れてきたみたいだ。お妙さんの隣になれなかったのは残念だが、お妙さんと仲のいい舞ちゃんならいろいろと相談に乗ってもらえる。


「じゃあ、早速で悪いけどこれ読んでみてくんない?」


俺が自信作のお妙さんへのポエムを披露すると笑顔で受け取ってくれた。舞ちゃんはとってもいい子だ。
いや俺にはお妙さんが一番なんだけどね。

可愛いし(いやお妙さんのが可愛いんだけども)優しいし(いやお妙さんなんて菩薩なんだけども)他のクラスからも結構人気があるし(いやお妙さ以下省略)
本当に本当にいい子なんだ。

俺は舞ちゃんにノートを預けると、いつもの如く愛を伝えるためお妙さんの元へ向かった。




「お妙さァァぐぼォ!」

「まあゴリラさん居たんですか」


今日もお妙さんは可愛いらしい上にシャイだ。そんなに照れなくてもいいのに。


「い、いえ大丈夫ですよ…それより何してるんですか?」


お妙さんの手には、数枚の手紙らしきものが握られていた。まっ、まさか…!


「おおお妙さんもしかしてそそれは…」


俺が震えながらそれを指差して訊ねると、お妙さんはにっこりと笑って頷いた。


「ええ」

「許しませんよォォ!!ラブレターだなんてそんなベタな!てゆうかそれなら俺なんていつもお妙さんに愛を…げふっ!」

「私宛じゃないわ、黙りなさいゴリラ」


お妙さんの爽やかな笑顔とともに決まる右ストレート。今日もいいパンチだなァ…。


「ってえぇ!?おお妙さん宛じゃないんですか!?」

「さっきからそう言っているでしょうゴリラ。そして消えなさいゴリラ」


にこやかに俺を殴るお妙さんを見ながら疑問が浮かぶ。


「じゃあ、誰宛なんですか?」

「舞ちゃんよ」


サラリと言ったお妙さんだが、よく考えたらお妙さんとこんなに長く会話できることなんてめったとない。にやける頬を抑えながら、そして度々殴られながら、お妙さんと舞ちゃんについて話した。舞ちゃんは本当にいい子だ。おかげでお妙さんとたくさん話せた。
いつもより長く話した所為で顔はいつもより酷く腫れたが、いつもより嬉しかった俺は満面の笑みで舞ちゃんのところに戻った。