「…どうしよう」


そんなこんなで私は、預けとくから読んでみて!と笑顔で渡されたノートを片手に悩んでいる。今は休み時間で近藤くんはまたお妙ちゃんのところへストーカーに行ってるはずだ。
きっと、戻ってきたらボコボコになった顔で笑いながら感想を聞かれるはず。そこで感想なんて言ったとして、もしお妙ちゃんにバレたら私の命はないだろう。


「…本当にどうしよう」


溜め息を尽きながらパラパラとページを捲っていると、いきなり後ろから声をかけられた。


「あの〜、」

「は、はいっ!」


恐怖と緊張で声が上擦ってしまった。クラスには大分慣れた私だけど、この人には未だに慣れない。


「やだなあ〜、敬語なんていいですよ。何を読んでるんですか?」


明らかに一人だけ生徒じゃないだろ、と突っ込みたくなるような屁怒呂くんは、にやっ(本人としてはにこっ)と笑った。


「こここれ?近藤くんのなんだけど…」


私はビビりまくりながらも名案を思い付いた。近藤くんには本当に悪いんだけれど。


「屁怒呂くん?いや屁怒呂様?」

「屁怒呂でいいですよ」

「よよかったら読んでみる?近藤くんが書いた詩なんだけど…」


おずおずとノートを差し出すと屁怒呂くんは邪悪な顔で(いやきっと本人は怪訝な顔のつもりで)訊ねてきた。


「…いいんですか?」

「う、うん。…読みたければいいと思うよ」


近藤くんは「俺のお妙さんへの熱い想いをみんなに知ってもらいたいんだ!」と言ってこのノートを自分からいろんな人に見せていた。だから、私から屁怒呂くんにノートが渡っても、笑顔で許してくれるに違いない。
それでもまだ人のノートを勝手に見ることを気にしているようだったから、近藤くんもいろんな人に読んで欲しいって言ってたから、と付け加えるとなら是非読みたいです!と恐ろしい笑顔を返してくれた。

うう、ごめんね近藤くん。