「笹木舞です。あと一年しかないですが、よろしくお願いします」
真っ直ぐな目と視線がぶつかって、心臓が勢いよく跳ねた。なんなんだコレ。しっかりしろ、俺。
「じゃー空いてる席に…げっ、多串くんの隣かよ」
銀八の声に反射的に隣を見る。そうだ、俺の隣は空席だった。
「俺は多串じゃねーって 言ってんだろ!」
いつものように銀八に向かって怒鳴りながらも近付いてくるそいつから目が離せない。心臓の音がどくどくと響いて聞こえる。なんだコレ、俺はこんなん知らねーぞ。
「あ!えっと、朝はありがとう」
「お、おう」
そいつは綺麗な瞳を細めて俺を見ながら礼を言った。覚えていてくれたのかと少し嬉しくなって自然と表情が和らぐ。 あれ?なんだ俺。嬉しい?嬉しいって、なんでだ?
「え、と…」
戸惑いがちに向けられた視線にまた心臓が跳ねる。ああ畜生、今日の俺の心臓はどーかしてやがる。 変に高鳴る心臓を鎮めようと意識しながら、努めて普通になるように言葉を発した。
「土方だ。…土方十四郎」
「これからよろしくね、土方くん」
それでもにっこりと眩しいくらいの笑顔で言うそいつに、目を奪われたのは紛れもない事実だった。ああ今日の俺は本当にツイてるな、なんて思いながら緩む頬を抑える。 この気持ちがなんなのか、これからじっくり考えることにした。
せっかくのチャンス、活かしてやろうじゃねぇか。
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