思えば、今日は朝からツイてた。いやいやなんか霊的なもんとかじゃなくて、運が良かったってことだ。
いつもなら出来てない筈の朝食が今日だけは既に出来ていて、いつもより早く家を出られた。そのおかげで毎朝懲りもせず俺の命を(本気で)狙ってくる総悟にも会わずに済んだし、信号にも一つも引っかからずに学校まで来れたんだ。だからいつもより早く学校に着いて、不思議な奴にも会えた。



そいつは靴箱の前で重い溜め息を吐いていて、俺はただ見慣れない奴だったから風紀委員として声をかけた。


「…誰だお前」


そいつは驚いたように肩を震わせてびくびくと答える。


「あ、の…今日転入してきた者なんですけど…」


そいつは俺を見ているようで見ていないような不思議な目をしていた。虚ろなわけではなく、もっと澄んだビー玉のような瞳。


変なやつ。

そう思うのと同時に少しだけ興味が湧いた。


どうやらそいつは俺を怖がっているらしかったが(いつものことだがやっぱりヘコむ)目だけは、しっかりとした光を宿して俺を見ていた。


「転校生か。クラス分かるか?」


とっさに言葉が口をつく。放っておけばいいのに、何故だか俺はもう少しこいつと居てみたいと思ってた。不思議と、惹きつけられいてた。


「だ、大丈夫です!1回来たことあるので…」

「そうか。じゃあな」


生憎申し出は断られ、俺は教室へと戻った。