君が泣いてる
病みちゅうい








「好きだぜ小狼ー!」

「だめよー!小狼は私の婚約者なんだからー!」

「ああもうよせ、二人とも…」



「だって苺鈴が…」

「だって拓が…」





いつも、いつだって、この三人でいた。
クロウカードだって、俺たちみんなで集めてた。

小狼が日本に行ってしまった時はもう悲しくて寂しくて



俺はすぐに後を追った。




でもそこには
俺の知らない小狼がいた。






「さくらっ…」

「なに?小狼くんっ」






あきらかに、小狼はこの女に好意を抱いている。






ずっと一緒にいたのは俺なのに
誰よりも小狼のことを知っているのは俺なのに






許せない。そう思った。


















「やめろ!!っくそ!拓っ!!!」

「や…めてぇっ…!」

「あかん…!これじゃ桜が…」







周りが騒がしい。

空が暗い。





ああ、そうか。



俺は今この女の首をしめているんだ







周りのやつらは動けない。それはそうだ。



俺の魔法で、縛り上げているのだから。





「く…は…ぁっ」




苦しむこいつを見るのが、心地よかった。



けれど、俺を見る小狼の目が、悲しかった。






一度、首から手を話した。



「ねぇ、」

「っ…!」

「なんでお前は、俺の大切なものを奪ってしまうの…?」

「…ぇ」








その時、この女が俺の頬に手を添えた。



「あなた、泣いてるの?」







言われてから気づく。
ああ、俺は泣いているんだと。




悲しいのだと。






それから、俺は彼女の頭を優しくなぜた。



「…ごめんね、さくら」

「えっ…」







すぐに俺は魔法を解き、彼らを開放した。


そして、









ブシュッ






するどい刃を己に突き刺した。








周りが、騒がしい。

でも、もう聞こえない。

聞こえないんだ。







君が泣いている

薄れて行く意識の中、
最期に見たのは、彼の涙だった。








prev next

bkm