You're the one






屋敷に近づくにつれ、
霧がかかってきた。



いや、この臭いは煙か?



野焼きでもしているのだろうか。





たいして気にもせず、屋敷へと歩く。







気にしないのがいけなかったのだ。
そこには、真っ赤に燃え盛るローザの屋敷。

そして私を見て去っていく敵対ファミリーの下っ端たち。





「い・・・や・・・、」





下っ端なんて追っている場合ではない。

私は燃え盛る屋敷に飛び込んだ。





暑さなんて気にしない。
痛さなんて気にしない。


ただ、ファミリーが、家族が心配で








廊下には火のなかでもわかるくらいの
おびただしい血、血、血、




そして息のないファミリー達を包む炎




「っ、ボス!!ボスーーーー!」




必死でボスを呼ぶ。
涙が出ても、息が苦しくて吐きそうになっても、
呼び続けた。




書斎の方へ行くと、
ボスが倒れていた。



「ボス!!!」


ボスを抱え起こすと、
血だらけのボス。




せめてボスだけでも。





ボスを抱え、書斎の窓から飛び出した。






草むらにボスを寝かせひっしに呼びかける。



「ボス!起きて!」

「・・・っ、ユウ、か?」





かすかに目を開け、ボスはしっかりと私を見た。





「そうだよ、私だよ・・・任務から、帰ってきたんだよ・・・!」

「そう、か・・・よくやったな、ぁ・・」





今にも消えそうな声で話しながら、震える手で私をなぜる。


その手を掴み、私は泣いた。





「私はもう、だめだ。ユウ、奴らが戻ってくる前に逃げる、んだ」

「い、いや!ボスも連れていく・・・!」




「言うことを・・・聞き、なさ、い!!」






そこで、ハッとする。
ボスに怒鳴られたのは、初めてかもしれない、から。






「これを、」




ボスに渡されたのは、オレンジ色のガラスのような飾りがついたリングだった。




「ローザファミリーの、ボスのリング、だ」

「・・・そんなもの、受け取れない、よ!」






すると、ボスはふっと笑うと、私を弱く抱きしめた。




「お前に会えてよかったよ、ありがとう」

「ボ・・・ス?」

「ローザを、よろしく・・・な・・?」

「えっ、!」






そこまで言うと、眠るようにボスは目を静かに閉じて
動かなくなった。






    【You're the one who made me step forward.】
きみがいたからこそ、一歩前に踏み出せたの












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