知っていました。





ある晴れた、心地よい日曜日の中庭。


小鳥の囀も聞こえて、
風も気持ちよくて。

そんな日曜日。










私は泣いていた。












トキヤに、昨日、私は好きだと伝えてしまった。
愛していると、言ってしまった。



当然、真面目な彼の答えはno.


いや、校則などではなく、
私には彼を揺るがすほどの
魅力なんてなかったのかもしれない。

きっと、そう。









声をあげるわけでもなく、
涙を流すわけでもなく、
私は静かに、静かに、泣いていた。








「愁…?」




ああ、よりによって。




トキヤと同室の音也。





「なにしてんの?こんなとこでっ」

「ん、ぼーっとしてたんだよ」

「…そか。」







そこまでいうと、彼は私の隣にそっとすわった。








「愁は、…トキヤが好きだったの?」





ああ、この人にはデリカシーってものがないらしい。
いつものことだったけれどこれはないだろう。




「好きだったじゃないよ、好きなの。」

「えっ、今も?」

「そ、今も、好きなの。」

「そっか…そうなんだ…」






そこまで聞くと、また黙り込む音也。







「なんか…私に用があったんじゃないの?」

「うん…」

「なに?」

「俺、君が好きだ。」

「うん、知ってる。」

「そういうんじゃなくて!俺は愁の事を本当にっ」

「だから、知っているんだってば。」

「え…」





音也の気持ちは、結構前から知っていた。
自意識過剰なんじゃなくて、音也がわかりやすいだけ。

でも、私はトキヤが好きだったから、
気付かないフリをしていた。

傷つけたくは、ないから。






「私、音也とはまだ友達でいたいの」

「…」

「そんなに軽い女じゃないんだから、男にホイホイ堕ちたりしないよ。」






私は立ち上がり、
スカートについた草を払い落とした。





「…友達なら、」

「愁?」




「友達なら、何も考えずに泣いている友達を友として慰めてもらえるでしょう?」

「っ…もちろんっ、」


ああ、ずるい女。


友人にまで、ずる賢く…


私はずるい、女だね。






知っていました。
貴方がわたしを好きだということを。
貴方がわたしを、慰めてくれるということを。











[12/18]
×




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -