星空コンビニ

 久しぶりに駅で待ち合わせをすることにした。俺は学校で早く着きそうだったのに、一人で亮の家まで向かうのは夜道は危険だからって亮に言われて待ち合わせになった。亮は今日も仕事でポケットから響く音は、亮の到着が10分遅れると告げた。


「あ、もう着くかも」

 メールが来た時の俺は予定よりも10分早く到着し、駅前のコンビニに寄って時間を潰していた最中だった。ちらりと時計を見る。いい頃合いだろう。
 俺は暖かなコンビニを出ると、再び駅の改札前まで向かった。急に風が吹いて、俺は身を縮める。季節は急速に冬に向かい今日は特に冷えた。地域によっては雪も観測されたらしい。

 あ、息が白い。



「アキ」

 控え目に俺を呼ぶ声が聞こえた。億劫な首を動かすと、亮が改札を抜けようとしている。
 いつからだろう。亮が俺のことをアキと言うようになったのは。昔は確か「あきらくん」だった気がする。

 思い返すと、なんだか可愛い。

「りょう」

 なんだか照れ臭いけど、笑顔で手を振る。



「ごめん、お待たせ」

 改札を出るやこちらに走ってきた亮は、白い息を吐き謝罪の言葉を並べた。謝る亮はいつも可愛くて困る。俺は怒ったりなんかしないのに。


「ううん、俺も来たところ。早く行こう」
「アキはせっかちだね。」

 俺が亮と腕を絡ませにっこり微笑むと、亮はそう言って爽やかにそしてしたたかに笑ってみせた。駅から亮の部屋まで徒歩15分。それを短縮したくて言っただけなのに、さっきの言葉の意味を理解して俺は顔を赤らめる。


「さ、寒いだけだから!」

 亮は「わかってるよ」と言って笑うと優しく腕を組み直し歩きだした。もう。わかってないだろ、あの言い方。


「見てアキ、綺麗」

 亮がふわりと微笑み、目線で空を指す。

「わあ、寒いから星がはっきり見えるね」
「星を眺めるアキも可愛いよ」

「なにそれ」

 甘い言葉を聞き流しながら、星が綺麗なのは空気が澄んでるからだと昔、父さんが言ったのを思い出していた。

END


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