「気持ち」とは、ひとが生きていく上で、どんどん溢れだすものである。その気持ちは、ひとに隠し過ぎてはいけない。照れという感情は特にだ。なぜなら、隠された真実は、真実で無くなるかもしれないから。
まあ、極論だけど。
つーか、んなことわかってても守れるかどうかは、違う話だけど。
「おい、アホ」
「…」
「これ。いるか?」
「…こ、これって?!ちょ、え、い、いります!いります!」
綺麗にラッピングされたコレが何なのか瞬時に判断した司は、拗ねていることを忘れ嬉しそうな笑顔を浮かべて俺に飛びついた。
そして俺の名前を呼びながら耳元に頭を擦り付ける。犬みたいで、くすぐったい。
単純だなコイツ。
「はーなーれーろ。溶けるぞ」
「だっだめ!」
司は急いでラッピングをガサガサと破り、中身を取り出した。そして「セーフ!」と叫んだかと思うと年下らしい顔をして「食べていい?」と聞いてきたので、肯定の意味で頷いた。静かに頷いたまま俯いたのはコイツをかわいい、と思ってしまったからだ。
すると、ひやりと夜風が頬に触れた。ポツリと声を出す。
「味は良い、と思う」
「え?先輩が作ったの?確かに手作りっぽい…」
「いや?夢子が作ったのを俺が冷蔵庫で冷やしただけだ」
……。
「な、なにそれ。でもいい!幸せです。村上先輩」
「…気持ち悪いな、その言い方」
あ、たべた。
「おいしいです!つーくんだいすき!」
まあ。たまには、こんな日があってもいいか。
END