ばれんたいん2



 「気持ち」とは、ひとが生きていく上で、どんどん溢れだすものである。その気持ちは、ひとに隠し過ぎてはいけない。照れという感情は特にだ。なぜなら、隠された真実は、真実で無くなるかもしれないから。

 まあ、極論だけど。


 つーか、んなことわかってても守れるかどうかは、違う話だけど。


「おい、アホ」
「…」

「これ。いるか?」
「…こ、これって?!ちょ、え、い、いります!いります!」

 綺麗にラッピングされたコレが何なのか瞬時に判断した司は、拗ねていることを忘れ嬉しそうな笑顔を浮かべて俺に飛びついた。
 そして俺の名前を呼びながら耳元に頭を擦り付ける。犬みたいで、くすぐったい。

 単純だなコイツ。

「はーなーれーろ。溶けるぞ」
「だっだめ!」

 司は急いでラッピングをガサガサと破り、中身を取り出した。そして「セーフ!」と叫んだかと思うと年下らしい顔をして「食べていい?」と聞いてきたので、肯定の意味で頷いた。静かに頷いたまま俯いたのはコイツをかわいい、と思ってしまったからだ。


 すると、ひやりと夜風が頬に触れた。ポツリと声を出す。

「味は良い、と思う」
「え?先輩が作ったの?確かに手作りっぽい…」


「いや?夢子が作ったのを俺が冷蔵庫で冷やしただけだ」


 ……。

「な、なにそれ。でもいい!幸せです。村上先輩」

「…気持ち悪いな、その言い方」


 あ、たべた。


「おいしいです!つーくんだいすき!」

 まあ。たまには、こんな日があってもいいか。

END


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