おまけ
ツカツカと廊下を歩く。隣の存在を意識していなかったので、彼女は早足になって俺に合わせた。彼女がくすりと笑う。
「まるで一枚きりな言い方だったね」
「煩い。聞かれなかったから、話す必要はないの」
俺の答えは的を射ていたようで、彼女はつまらなそうに雑誌をペラペラ巡る。
「ねえ、あの先輩の写真で賞とるの何回目だっけ?」
「秘密」
人差し指を唇に宛て、先輩に向けることのない笑顔でそう言うと、隣で彼女がクシシと笑った。
「勝手になんて盗撮だよ?」
「いいの。それに、罰は当たらないと思うし。」
「ふーん。」
アイツみたいに振り回したりしないから、この小さな幸せぐらい奪わないでくれ。
そう思いながらカメラをそっと撫でた。
END
『keep something in mind』(心に留めておく)