好きな人が俺以外の人と笑いあってる姿を見るのは苦しくて嫌だと思った。
あー俺って独占欲強かったんだ。
そんな客観的に見れるほど俺は人間出来ちゃいない。
その日も酒を買い込んだ。先輩は酒好きじゃない。むしろ苦手としていたのは知っている。でも俺は酒を飲んだ先輩が好きだった。
それに今日は先輩のお兄さん出張でいないらしいから、きっと最後まで出来るだろうし。
だから俺は浮かれていたのかもしれない。
そうだ。浮足立ってたんだと思う。先輩が家で飯を誘うのはよくある事じゃなかったし。
嬉しくて走ってきてしまった。なのに部屋は真っ暗。先輩の「忘れてた」の一言。
そして連れて来た女。
(…なんだよ)
いつも寛大な司くんもカチーンと来ちゃうわけで。
てか松田さんて先輩に気があるっしょ。わかりやすいんだよね。どうせ先輩鈍感だから気が付いてないんだろうけど、先輩なんか松田さんに優しいし見ててイライラする。
だからヘラヘラ笑ってみせた。そしていつもより多めに先輩のコップに酒を注いだ。 何も知らずに笑う先輩。笑う松田さん。上手く笑えてしまう俺。
あー豚肉美味い。
「ちゅかしゃーだっこ」
「はいはいだっこねー」
完璧に潰れてしまった、俺の愛しい人。
聖母マリアに仕える天使の様に無垢な微笑みを見せ、俺の首に腕をまわした。知り合いにこんな姿見られるのは心底嫌がるくせにアルコールとは魔物である。
「(可愛いなあ…)」
保父さんになったかの様に今は幼い彼を抱きしめた。
「もう寝りゅ」
「うん、そうしてくれるとお兄さんも助かるわー」
フラフラと頭が揺れている。
「でも松田しゃん送って行かなきゃ」
またその女を見ているの?酔っ払ってる時ぐらい俺を見てよ。
松田さんは困って様な顔をみせた。
「え、えと」
「いいえ、俺が送っていきますよー」
「つかさが?」
俺が送ると言っただけなのにきょとんとした表情で先輩はこっちを見た。
なぜ?