ユキはにっこり笑った。
「この衣装ね高橋くんと選んだのよ。明が似合いそうなものを」
「……は?」
「んじゃ、写真撮ろうか。」
よくみれば巧の肩にはカメラ等を入れる黒のケースがぶら下がっていた。
昔、巧が毎日持ち歩いていたものだ。あ、懐かしい。…じゃなくて!
「ちょっと待って!どういうこと?ユキ」
二人は笑いながら写真を撮る準備を始めた。渋る俺の体は巧により軽々しく持ち上げられる。なにすんだよ!
「お。相変わらず軽いなお前」
「お前って言うな。ねえ、ユキ説明してよ!」
「ふふ、だからね?」
セットの中で説明を受けた。その度にライトが光り、何枚もが写真になった。
大半が固まった表情だったろうがそんなの知ったこっちゃない。
「可愛い、明」
「デジカメの画像見ながら言うの止めてよ」
「なぜ?いいじゃない」
「よ く な い」
恥ずかしいだろ。
「タコみたいな明も可愛いわ」「もう知らない」
ユキが巧と仲がいいだなんて知らなかった。全ては二人の計画で、俺はまんまと乗せられてこんな格好までしているのか。
ああ最悪。まさか巧まで。学校で会うだけでも嫌なのに。
フワフワの黄色の丈の短いシフォンワンピースがシワになるのも気にせず背もたれの無い黒のソファーに座った。
巧はカメラを片付けてるから二人きりだ。
「明?」
「……。」
すると、ユキは俺の隣に座り、拗ねてむくれる俺の頭を優しく撫でた。
そんなことじゃほだされないからな。
「ごめんなさい。久しぶりに一日中二人で話せたから浮かれてたのよ」
「……ユキ?」
目が合うとふわりと微笑まれた。また寂しそうに笑ってる。そう思えばここ最近忙しくてまともにユキの顔すら見てなかった。
誕生日会なんて喜ばしい行事のはずなのに最近のユキは疲れた顔してたらしいし。亮がそっと教えてくれたから心配で。だから相談にも乗ったわけだし。
もしかして、ユキは寂しかったのかな?
「…ごめんユキ」
「いいえ、私が浮かれすぎたわね」
「ユキ…」
「最後にひとつだけ、いいかしら?」
「うん?なになに、言ってみて」
またユキは朝と同じ微笑みを浮かべた。
「このままご飯食べに行きましょう!」
「え」
ああ、キラキラと目が輝いている。老舗おでん屋に二人で訪れた時も同じ顔をしてたのを思い出した。あの時も今と同じくキラキラと目を輝かせていた。