明くんの災難



 突然、身体が密着したかと思うと亮のキスの雨が降り注いだ。どんどん俺の顔は赤くなる。

 さっきまで寝ぼけてると思ってたら、コーヒーで目が覚めたのか急にディープ過ぎる。



「んー!んー!だめっ…」

 いくらはね除けようとしてもがっちり捕まれている以上、離れられない。うっすら涙が滲む。制服がしわになってしまう。



「んふぁ…、んん」


 ダメだ。亮キス上手すぎ…。ああダメ、気持ち良い。仄かにコーヒーの味がする。



「ん……ぁん…り、亮…」


 心が込もった口付けは、なんて幸せなんだ。目がトロンと溶け、ちゅくちゅくと舌を絡め合う。どちらの物かわからない唾液が垂れた。



 小説や映画にある、『天にも昇る』とは、この事だろうか。鳥が囀ずる朝っぱらから好きな人と、こうやってまどろんで、


 それからゆっくりキスをし、ハグを交わし…


ゆっくり…





しちゃだめだ!!


「え?」


 バチン!

 と亮の頬を両手で叩き、俺は目を見開くと、緩んだ隙に腕の中から逃げ出した。


「いっーー!!」

 目の前の亮は目に涙を浮かべ声にならないほど痛がっている。


「ねぇ!今、じ 時間!今何分!?」
「……いっ、痛いって。まだ7時8分23秒だよ。ねぇアキ もう少しキ、」


「行 っ て き ま す!」


 ゴチンと鈍い音と共に、右拳が少し痛んだ。でも、亮の頭部はもっと痛そうだから勝った気がする。「暴力反対」と掠れた亮の声が聞こえたが、無視した。



 こんなことをする時間の余裕なんて朝にはないんだ。急がなきゃ。ガチャガチャと余計な音を立て準備をする。



「あ、アキ」


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