工くんの相談



 馬鹿だな、本当に。そこが、良い所でもあるんだけど。


「俺さ、今付き合ってる人のこと前に言ったよね」
「う、うん。今度改めて話すって言ってくれた人だろ?明が話したい時でいいって、俺…」
「男、なんだ」

 ぐっ、と力が入っていた。ドキンドキンと卑屈な心臓が煩い。恐る恐る佐々木を見つめる。今度は。俺が怯える番だ。

「相手。俺、男と付き合ってるんだ。」


「……は?」

 佐々木は目を丸くしてこちらを見つめていた。そりゃ、そうか。


「ささ、」
「俺のこと、バカにしてるのか?」

「違うよ。そんなんじゃない」
「じゃあなんだよ!突然んなこと言われても、意味わかんねーよ!」

 そうだよね、怒るのも無理は無いか。この手は使いたく無かったんだけど、しょうがないよね。

「ちょっと待ってて」
「え?なんだよ」

 俺は携帯を取り出して、慣れた番号にダイヤルを回した。トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル、ガチャ

『アキ?』

 亮の優しい声が響く。


「うん、俺。ねぇ、今何してるの?」
『ん、今?今は雪と弁当食ってるよ?どうかした?』

 ってことは、撮影の休憩時間か。弁当食べれるほどだから長いのかな?一応確認しておこう。

「何時まで休憩?」
『うーん、あと30分ぐらいかな』

 やっぱり。30分もあれば話、出来るよな。俺は、佐々木を見つめ、ゴクリと息を飲んだ。


「そっか。今から俺の友達に電話かわるから、亮から俺の話してくれる?」

 もう、俺からは何も言えないから。直接佐々木に言って欲しい。仕事中の亮には悪いんだけど。


『え、いいけど。なんで?』

「また今度言うよ はい、佐々木」

「わわっ」

俺は赤色の携帯を佐々木に投げた。

「あ、もしもし はじめま…」

『・・・・・』

「えええ、みや、あ、あ、はい!」

『・・・・・』

「は。はい、」

『・・・・・』

「い、いいえ。むしろ、なんて言うか…」

『・・・・・』

「はっはい!よろしくお願いします!」



 うーむ。失敗か成功か判んないけど、佐々木がびくびくしてる。相手は亮なのに。何の話してるんだろ?

 ここだと、聞き取れない。

 佐々木ったら何回もお辞儀してるし。典型的な日本人だな。あ、電話切った。



 なぜか、青ざめた佐々木と目が合った。


「……はい、明。」
「ん?もういいの?」

「う、うん。サンキューな」



 ハハハ、と笑いながら俺に携帯を返す佐々木は明らかにびくびくしてるし、動揺してる。きっと、余計なこと言ったなアイツ。後で聞いとこう。




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