そして、今に至る。家の大きさぐらいで、そこまで驚くかな、普通?それに、ウチの高校ならこれぐらいの家のやつゴロゴロいるだろうし。
自室まで案内する間も、キラキラした目で家を隈なく見つめていた。
「やっぱ違えよ。なんだ、この広い部屋」
そう言ってはしゃぎながら、俺の部屋でカーペットに寝転ぶ佐々木。本物の馬鹿じゃないのか、コイツ。
「あんまり馬鹿なことばっかり言ってたら、その腕折るよ」
俺はそう言いながら、カチャンと二人の紅茶が入ったコップをテーブルに置いた。
ぐるりとこちらを振り向く佐々木。目が合う。
「はあ?天才テニスプレイヤーになんてこと言うんだよ!」
そうそう、いつもテニスの事しか考えてない。それが、佐々木工だよ。恋でうじうじするのは、佐々木らしくないよ。
「やっと、いつもの佐々木だね」
俺はにやりと笑った。
「……う」
「どしたんだよ、朝から変だし」
「変かな?」
「うん。変だよ、すごく」
「…ひかない?」
「なんでひくんだよ」
そんな寂しそうな顔するなよ。友達だろ?
「だって、俺、明と友達になれて嬉しかったから、ひかれたら嫌だなあって…」
コイツ。嬉しいこと言ってくれるなあ。でも馬鹿な分ストレート過ぎて、照れる。でも例え、他の誰かが寄って集って佐々木を罵倒しても俺はずっと味方で居続けるよ。
「ひかないよ。絶対。」
「…ありがとな、明」
「話してみて?」
寝転がっていた佐々木がスルスル動いて、胡座をかいて座った。俺もその前に座って、向かいあい、目が合った。佐々木の真剣な瞳に吸い込まれるかと思った。
「俺の、好きな人、…チカ先輩なんだ」
「ふーん、チカ先輩…は?!なんだよそれ!」
俺は気が付いたら、目を見開いて身を乗り出していた。そして、じっと佐々木を見つめている。佐々木は耳まで真っ赤にしてるし、…本当なのか。
チカ先輩って、あの美人で有名な近沢登流かよ。ちょっと、待ってよ。あの人、いくら美人で有名でも男じゃないか?
おいおい、ホモの友達もホモってか?…笑えない冗談だよ。
「ひっひかないって言ったくせに!」
「ひいてないよ」
でも、驚いてはいるけれど。
「嘘吐くなよ、そんな顔したら傷つくだろ」
「どんな顔だよ」
元からこんな顔だし。そう思いながら溜め息を吐くと、佐々木は俯きながら、もごもごと喋りだした。
「キモいよな、友達が男好きだとか」
「キモくないよ。恋愛は自由だろ」
お前がキモかったら俺は終わりだよ。俺なんて、男と付き合ってるんだから。それこそ、気持ち悪いだろ。
「ねえ、佐々木。俺さ、お前に隠してることがあるんだ」
スウッと息を吸い込んだ。ドキドキする。でも今、言わなきゃ。亮と付き合ってること。
今まで誰かに話したら、途端に嫌われるんじゃないかと思ったら怖くてだから誰にも話せなかったけど。
「隠してる、こと?なにそれ。なんだよ」
「ひかない?」
「ひかねーに決まってるだろ、友達じゃん」
……わざと佐々木と同じセリフを言ったのに、全く同じ会話してることコイツ気付いてない?