「明って本当に社長の息子なんだな」
「は?」
俺は自分家の玄関を潜りながら、大きく開けた目を輝かせる佐々木に目をやった。
「家、デカ過ぎだろ」
「佐々木がマックは嫌だって言ったから」
「そーだけどさ」
これは想像以上だろ、と佐々木のはしゃいだ声が遠くで聞こえた。何、人の家の想像勝手にしてんだよ、と殴っておいた。
それは、突然の言葉から始まる。
「 俺、好きな人出来たかも…」
とてもとても小さな声だった。それは、自身の机に向かって、今にも消えそうな小さな声だった。俺達は自分たちの教室にいて、しかも昼休みだからまわりがガヤガヤしてたけど。良かった、聞き取れた。
「本当?」
「……うん」
朝から様子がおかしいと思ってたけど、それでか。
「ふーん。俺が知ってる人?」
「えっと、」
でも、それだけか?
俯いてたのは照れているんだと思ったけど、なんか違う。変だ。前にC組の青木さんが好きだった頃はもっと明るかった(青木さんには速攻で惨敗した)はずなんだけど。
どうしたんだろ?…まあ、いつもコイツは変だけど。
「どした?話聞くよ」
「あんがと。でも、……ここじゃ言いづらい、つーかさっ なんつーか、はは」
苦笑する佐々木。俺と佐々木は友達関係は、まだ会って数ヵ月も経ってないのに親友だと言えるほどの仲で。
気が合うと言うか、馬が合うと言うか。(同じか?)それは、佐々木が憎めない性格なせいもあるけど。
その他にも佐々木のおかげで俺は救われたことが何度もあるし。
だから、俺も力になりたいって思う。
「マック行く?」
「んー、人に聞かれたくないんだ、ごめ」
「そう」
そりゃ、思春期真っ盛りの恋ばななんて誰にも聞かれたくないだろうな。俺は、特殊だから誰かに話すことはないけれど。(亮のこととか、亮のこととか、亮のこととか)
「やっぱやめ」
「じゃあさ、俺ん家くる?」
「え?!」