雪ちゃんの宝物



「…明。」

「…なに?」


 その大きな目はウサギのように真っ赤だ。それに、ぐちゃぐちゃで真っ赤なのは、…お互い様よね。


「明、好きでいてもいいの?」

「うん俺、やっぱり雪が好きだもん ね。」


 えへへと笑う明。通り雨のあとの空みたいにキラキラした笑顔だ。


綺麗、明。


「うん、私も大好き」


 手を伸ばして、明を抱き締めた。私と同じ家の匂いがする可愛い弟。世界で一番愛しい人。



「えへへ、すきー」

「えへへ」



「俺も明がすきー」

「…宮元黙って帰りなさいよ、ウザいなあ。」

「亮早く帰らないの?」


 じとっと宮元を見てから、明と二人で小さく笑った。いつのまにか涙は止まっている。


 なんだか、清々しい気持ちすらする。深呼吸。ああ、気持ち良い。



「…!酷い!こうなったら俺も明を抱き締めてやるっ」

「わっやめ」


 宮元は大きな腕を広げて、私たちに向かってきた。

「きゃっ」

 すると、バタン。と三人でカーペットに倒れこんでしまった。少し痛かったけど、カーペットで衝撃は和らいでいる。このカーペット、フワフワしてるんだ。

 助かった。え?あれ。なんだか、おかしい。


 可笑しすぎる。こんなに面白いと感じたのは久しぶりだ。


「ふっふふ」

「何だよっ」

「ははっあは、亮ほんとばか、あはは」


 明と顔を見合せる。そしたら同じ顔で笑っていた。

「あははっ」

「ふふっ」


 ふっ切れたてこんな感じなのかな?すごく気分が良いわ。




「明」

「なに?」

「大好き」

「うん」



 私は、ひとりじゃない。大好きな人が手の伸びる距離で微笑んでる。

 ありがとう、私の愛しい人。負けないからね。


 さあ、私だって本気でいくから覚悟しててね。






「帰りにクレープ食べましょ、明」

「うん、食べる!」

 明はオーソドックスにチョコバナナが好きなのは知ってる。泣いたあとは、糖分とらないと。



「俺は?」





「「ひとりで帰ったら?」」


END




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