「…痛かったから」
「え?」
「俺も痛かった。雪と亮が付き合ってると思ってた頃は痛くて痛くて。もう、消えたかったぐらいに」
そっと自分の胸に手を当てる明。少し顔を歪めて、痛そうだ。
「!……ごめんっなさ、い あきら」
ちょっと待って。私は明を泣かせてたの?
母さん命令だったけれど。アイツが明のこと好きなのは気付いてたからちょうど良いと思っていたのに。
「ごめんなさ、い 」
最低。明を泣かせるだなんて、最低だわ。明のことを思っただけだったのに。
悪い虫が付かないようにって。なのに、そんな。
ねぇ、それほど
アイツが必要なの?
「あきりゃ、ごめ」
「いいんだ、違う、ごめん。そんなのが言いたかったんじゃないんだ、…っ」
わたわたと焦る明。焦れば焦る分、明の言葉が本音だと分かる。悲しい。
「ごめんなさいっ」
「俺もご…ごめ」
「あきらあ…うわああん」
「う、うわああん泣くなよぉ…っ」
ぼとぼと水分が外に出てる。気が付けば、二人とも泣いていた。大声で。
「う、う、うわああ、ひく」
止まらない。どうしたら止まるのかもわからない。むしろ覚えていないと言った方が正しい。
でも、泣いている間だけはまだ明と気持ちを共有しているような気分になれる。おかしいよね。
「うわああん」
「うわああん」
どちらがどちらの泣き声かわからない。声と声が混ざり合う。