雪ちゃんの宝物



「好き。だから、だめよ、ね。明は…、っ私のなんだから」

「ゆき」

「アイツなんかには渡さないわ、男は獣なのよ。もし明に傷でも付けたら、」

「亮はそんなことしないよ」

「私だってしないわよ!」

 私は声と共にドン、と叩くと、控え室のテーブルはカタカタと揺れた。手が痺れて痛い。ジンジンする。






「ゆき。泣かなくていいよ」

 優しいね、明。貴方を思えば思うほど、大粒の涙が零れ落ちるのに。



 くるしい。


なぜだろうか。





「今まで二人で頑張って来たじゃない」


「……」

「明?」


「…ううん、それは違うよ」

「あき、ら?」



「雪と亮は俺の憧れだった。いつも追いかけて。だから、頑張ってこれた」

「あき、」

「追いつきたかったのは、亮が好きだったからだと思う、」

「!」

 ドクン。今、胸を何かが刺した。痛い。痛い。


「…っ痛い」

「ゆき?」

「痛いよお、っく、…」


 明は優しく、私の髪を撫でた。

「人を愛するってそう言うことだよ、雪。」


「いやっ」

 痛いのは、もう嫌。痛くないのがいい。

 もう昔のように、選べない仕事ばかりじゃない。もう泥沼の大人の世界から解放されたのに。


 世界中から明を守るために私は頑張ってきたのに、その明の言葉が私の胸を刺すだなんて。





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