雪ちゃんの宝物



「ゆき、ごめん」

「……なにが?」

「泣かないで」

「誰がっ、ひくっ?」


 …え?私泣いてる?そう思った瞬間、ツンと鼻の奥に痛みを感じ、頬を水が伝った。

 そうか、泣いているのか。いつぶりだろうか。


 小さい頃は、泣いたらいつも明がウサギのぬいぐるみで遊んでくれたね。

 私は、貴方の優しさに何度救われたか。


 私。今までずっと、

「明が好きなの」

 毎日、毎日。明が好きで。貴方のことだけを想って生きてきた。家族だとか、姉弟だとか関係なかった。

 一番傍に居て欲しいのはいつだって明だった。


恋ではないが、愛ではあると確実に言える。



世界で一番私が彼を愛してるとも言い切れる。



「知ってるよ」

 優しい笑顔だった。私の良く知る顔。他人のことを思っての微笑み。優しい子。私の愛しい人の笑顔。




「俺、雪も好きだよ」

「じゃぁなんで、アイツなの?私の方が明のこと…っ」

「俺たち二人きりの姉弟だろ?」


「あき」

「ゆきを泣かせに来たんじゃないんだよ?」



「…うっ、ひく、ごめん。明、ごめんなさい。悪い所は直すから、ひとりにしないで」

「っ。なんで、謝るの?」
「わかんな、い」

「ゆき」



 前が見えない。メイク前の控え室で良かった。ぼろぼろになる姿なんて見られたくない。いや、もうぼろぼろか。


「私、明が、好きなの」

「うん」





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