雪ちゃんの宝物



 私には昔から大切にしていた宝物がある。



「雪、あのね、俺」

 小さな頃から大好きだった。寂しいときも悲しいときも、傍に居てくれたのはいつだって貴方だった。

 貴方はとても可愛くて、愛しくて、毎日ハグしてもしたりないほどで。

 その宝物の貴方が今日、私に…、


「亮と!…付き合うことに、し、したんだっ」




 男なんかと付き合うことを告げた。




えっと、



「明?…何かの冗談なの?」


 目の前が真っ白になる。ちょっと待って。とりあえず落ち着こう。明の方をちらりと見ると彼は真っ赤な顔をして俯いていた。耳まで真っ赤にしてる。細い手がふるふると震えている。

ちょっと待ってよ。

何でそんな急に?


「冗談とかじゃないよ、俺」

「…本当なの?」

「うん、俺 亮が好」

「待って!やめて」


 とっさに声が出た。なんか、嫌。その先は聞いてはいけない。危険信号が頭の中で響く。だめ。



 顔を赤らめていた明の顔があがる。そして、目が合う。
今日もこんなにも可愛いのに。


 こんなに明を愛しているのに、私よりもアイツをとるの?






 お願い、待って。私を独りにしないで。







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