泣いても泣いても先が見え無かった。手を伸ばしても貴方は掴めなかった。それが掴めずにいたのか、最初から掴む意思が無かったのか、私は知らない。
とにかく、私は私に歯痒さを覚えていた。
「まだ泣いてるの?」
「ほっといて」
私は良く知ったその声に背を向けて体を丸めて突っ張ねた。
「無理言わないで。大切な人が泣いてるのに無視出来るわけないだろ?」
もう外は随分暗くなっていた。その中でぼんやり白く光る空間。私は今、そこにいる。今いるベンチの上にあるこの大きな街灯が無くても貴方は私を見つける気がして、心が沈んだ。でも、そうやっていつも私の側から離れない貴方を望んだのは私自身。どうしてそんなに優しいの?私は貴方をずっと。
「ごめんなさい」
「謝らなくていいよ」
「…利用してるのよ」
「知ってるよ?最初から」
目を開くと貴方は笑ってみせた。ああ、駄目だ。私は貴方の優しさに甘えてた。ずっとずっとずっと。
「一緒に居るの、苦痛かな?」
「ちがう」
違うから困ってる。傷付けたくないから困ってる。そして私の心の一番じゃないから困ってる。ごめんなさい。
「ならいいよ、好きだから」
「…ごめんなさい」
涙と共に謝罪の言葉しか出て来ない。このまま、全部吐き出してしまいたい。私はぬるま湯から上がって来られないでいる情けない人間なのに。もう優しくしないで。
「泣いてるのは俺のせい?」
「ちがう」
自分のせいよ。
「なら泣かなくていいよ」
「え?」
「俺が傍にいるよ?」
眉を下げて微笑む貴方がすごく好きなのに。心が痛い。
「貴方を好きになりたいよ」
「うん」
「でも駄目なの。なれないの。だって私は、私は」
声に出そうと大きく口を開いて外の空気を吸うと、突然世界が真っ暗になった。そして温かい何かが私のいけ好かない唇を塞いだ。
空で流れ星がキラリと光ったように感じた。
END