「かっ、かっ、」
僕は奮えながら叫んだ。
「かわいいー!」
「…邪魔しないでよ」
「えー見るぐらいいいでしょ?掃除の邪魔はしてないし」
今日は彼の家に遊びに来たのだが、彼は彼と良く似た母親と喧嘩したらしく、罰として大掃除をさせられている。
普段は何事もそつなくこなす彼が、唯一母親とは気が合わないところはなんだか可愛い。
始めは文句を言いながら掃除をする彼の背中を機嫌良く眺めていたのだか、流石に飽きた僕が偶然見つけたのはアルバムの束で。それを当たり前の動作の様に引っ張り出して、そして今に至る訳だ。
「あ、ここらへんは面影あるね」
写真と彼を並べた。彼はつまらなそうに横を向いたままだ。
「そんな生まれたての写真と比較されたくないんだけど」
「えーかわいいのに」
パラパラとアルバムを巡る。たまに幼い頃の自分も写っていたが彼に見つからないようにページを巡った。この寝顔、すごく可愛い。
「もう、そんな昔の写真なんか恥ずかしいからやめて」
「そんな昔じゃないよ?」
だって彼はまだ僕の半分も生きてはいない。彼がいくら饒舌になっても、こればかりは負ける気がしない。
「うるさいなー」
あ、諦めた。
「昴くん」
「なにさ」
アルバムを閉じて、じっと見つめた。幼くも凛々しい横顔がシフトしていく。あ、目が合った。
「今こんなにカッコイイってことはこれからもっとカッコ良くなるんだろうね」
それはすごく楽しみだ。その時の流れは僕が老いることとイコールなはずなのに、なぜか楽しみに思えた。
昴くんがへにゃりと笑う。
「……もう、それは反則だって。」
彼はそう言って僕の頭に顔を寄せて、軽く唇を押し当てた。
未来の彼を思い浮かべながら、このままいっそ、時が止まればいいと思った。僕はそんな馬鹿げた矛盾にすら気が付かなかった。
END