であい(チカ・キョウコ編)

「はじめまして」

 周りでは、カリカリと鉛筆が画用紙を擦る音が響いていた。今は美術の授業中で、二人一組に分かれて互いの似顔絵を描くことになっている。優しい近沢くんは私に微笑んだ。


「え?」
「て言うの変かな?橘さん俺の後ろの席だもんね」

「あ、でも喋るのは初めてだから…」

 私が目が隠れる程の前髪をそっと横に流すと、そうだね、と言って彼は微笑んだ。ちらり。やっぱりすごく綺麗な顔。中等部の頃から有名人の彼は、今は私の顔をじっと見つめていた。綺麗な金髪。それを留めるオレンジのヘアピンがちょっと可愛い。

 カリカリ、鉛筆の音。緊急する。あ、長い睫毛。

「似顔絵って難しいね」
「え?そ、そうだね」


 実は絵は得意で。私の画用紙にはすでに近沢くんがいた。
 でも、似てないって言われたらどうしよう…。不安になってきた。

「…ねぇ、橘さんってさ」
「うん?」

「ちょっとごめん」

 そう言って自分の髪を留めていたピンを私の前髪に付けた。きっとおでこがまる見えなんだろう。急に視野が広がる。ていうか、顔が近い!な、なに?!

「…なっ!」

「やっぱり!こっちの方が可愛いよ」

 彼の手が私の髪から離れていく。そして顔も。

「近沢くっ」
「チカでいいよ。」


 男の子に可愛いなんて言われたのは初めてで。心臓がバクバクして口がパクパク動く。「あ、でも眉毛薄いんだね」なんて言ってまた笑った。このとき恋に落ちたなんて、貴方は知らない。


END
(09.08/01〜09.09/11)



prev next
back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -