なんということでしょう
「完成。はい、鏡」
「…あ、ありがとうございます。」
なんということでしょう。手渡された鏡から見える俺は、10分前とは驚くほど違っていた。
「どう?」
「すげえ」
言うなれば、さっぱりとしたスポーツマン風。さっきまでの毬藻の様な髪型はどこへ?
俺は信じられなくて鏡に写る自分をジロジロ見つめた。右左上下に目と首を動かす。驚いた。なにより、センスがいい。
「ユウちむカッコいー」
そう微笑んだのはチカさんだった。短髪になった俺とは違ってふわふわしたチカさんの髪が揺れた。
「さすが俺、こんなところにまで才能があるなんてな」
「ねー、さすがリュウだね。でも何でも出来すぎるとモテないんだってー」
「それは困るな」
「…チカはリュウみたいに嘘、つかない」
「ひどいなーショウは。俺、正直だよ?」
「ほら。ウソつき」
ショウはその綺麗な顔をリュウさんに向けて、冷たく微笑んだ。
距離が近いと思うんだけど。絵になる二人。俺の淡い恋心は散ったな。まぁ、安っぽくてミーハーな恋心だったけど。
すると急に会長と目が合った。な、なんだよ。
「でも前の髪型より似合ってるだろ?」
「うん俺もそう思う 新島先生がユウちむ気に入っている理由て絶対これだね。先生の好きそうな爽やかジュノンボーイ系」
ジュノン?なんだそれ。
前の髪型つったってただ伸びっぱなしにしてただけだから、比べられるほど思い入れはないけど、すごいなコイツ。そう思って見上げると印象的な蛇目とまた目があった。
「お気に召しましたか?お客様」
「お、おう。ありがとうございます…」
「どういたしまして」
誇らしげに目を細めて会長は笑い、何気ない動作で俺の肩や目の前をささっと切った髪を下に払い落とした。
誇らしげに笑った顔はまだ幼い様に感じた。
「(…いい人そうだな)」
それにしても凄いな、本当に。前髪を触る。短い。さっきまでのあれだけの髪が下に、
……あ。やはり床が俺の毛でいっぱいだ。
さっぱりしたが、量が多いのは本当に嫌になるな。箒を探さなきゃダメだな。掃除しないと…。
―――コンコンッ。