追いつかない頭

「ん?どうした?俺の顔に何か変なものでも付いてるか?」
「い、いえ!」


 やっぱり間違いない。目の前の男と噂のクラスメイトは同一人物だ。


 でもコイツはテスト期間中、毎日、放課後になってから学校に来てた奴なはず。

 実は、職員室で二人の話してる内容が聞こえてきてしまって…。

 その時にたしかそんなことを言っていたし、噂でも。



 ちょっと待て。噂ではコイツ、不登校で、しかもテスト受けてないんじゃなかったのかよ。


 なのに、そんな奴が生徒会長?意味がわからん!あの噂はなんだ?


「ねえ、ユウちむ、困惑してますって顔にかいてるけど大丈夫?」
「え?あ、は、えっと」

 チカさんの優しい問いかけに、どっちにも取れない返事で返した。


「まあ、ここの仕組みから何からわからないことだらけだろうし、君には特別に、この木村龍平生徒会長様に好きに質問してくれていいよ。」

「え、じゃ、あの、木村さんってテスト受けてないんじゃ…」

「へえ、まずそれを聞くのか。やっぱり面白いな、ユウちむは。俺はね、確かにお前と同じテストは受けてないよ。」
「じゃあ、」
「だけど、俺だけ違うテストを受けさせられてんの。学園のレベルを測るために別室でもっと難しーい問題ばっか解かちゃってるわけ」


 ニコリと微笑む。なんか、

「頭良すぎるからな」


 噂のイメージとも会長のイメージと違う。

 明るくて覇気があって、外見は少し派手過ぎるが外国の紳士の風格さえ垣間見れる。そして、このオーラ。

「あの、貴方は」
「ユウちむ、髪伸びたなー」

「は?」


 いきなりなんだ。ぐるぐると頭の中を巡る疑問に何一つ関係のない問いに驚いた。

 …確かに伸びたけど。前は立つほど短かったのに、今じゃ前髪だって目が隠れて見えてないぐらいだしな。

 いやいやいや。むしろあんたとは初めましてな勢いじゃねぇのかよ。なんで伸びたこと知ってるんだ。


「はい、そこ座ってー」
「は?」

 とてつもない重力が加わったと思うほど突然ぐいっと両肩を押されて、またこの真っ赤なソファーに座らされた。ぐわんぐわんと頭が回る。

 なんだなんだ?





「なぁチカ、そこのハサミとってくれ」
「はいはーい、どうぞ」
「サンキュ、」

 そう言いながら左手を伸ばすとチカさんは会長に手際よくハサミを渡した。え。なんか、嫌な予感。


「動くなよ?」
「え、」






 ハサミがキラリと光り反射したが、ニヤリと悪魔が笑うのを俺は見逃さなかった。



 ああ、神様…(俺、無宗教だけど!)




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