はじめまして、生徒会長様
「皐月さんって、小さくて、人形みたいだな」
「は?! あ、あんた ばっバカじゃないの!!……そ、それと名前、 真椰でいいから!」
「え?」
そう早口で捲し上げるとパシッと俺の手を振り払い、真っ赤な顔のまま走って部屋から出て行ってしまった。
なんだよ忙しい奴だな。手、痛えし。
「なんだ、あれ?」
「お?あの真椰からこんな短時間で呼び捨てのお許しを貰うなんて、ユウちむは色男だな」
「イロオトコって? リュウいつ来た?」
「んー?さっき。向こうの倉庫の方の扉から来た。色男ってのはな、」
「ちょっとちょっと、あんた誰ですか!」
当たり前に喋り出す突然表れた(見たら居た?)青年は、後ろを少し刈り上げた薄めの茶髪に、整った蛇顔の至るところにピアスがついていた。うわ、痛そう。
あ、コイツも役員なんだろうか。なんかここの役員は基本的に突然現れるんだな。
あれ、こいつ…?
「ん?ああ、自己紹介がまだだったよな。俺は生徒会長の木村龍平だよ、小林優也くん」
「っ! あ、ほっ、」
ニコリと微笑む彼とは裏腹に、あまりにも驚いた俺はパクパクと金魚が酸素を求める様に言葉を探した。慣れ親しんだ日本語が上手く発音できない。
「お?さっそく、あほ呼ばわり?俺」
「あ、なたが!…本当に、生徒会長?」
あははと笑う人を目の前に声を絞り出して出た言葉はこんな問いかけだった。間抜けな質問なのはわかっていた。でも、だって、
「ハッ。なんで俺がこんな嘘吐くんだ」
やっぱりそうだ。この俺様な態度。凛として動じず、我が道を貫く眼にそれに似合ったオーラすら感じる。
驚いた。俺は目の前の“生徒会長”を名乗るこの生徒を知っていた。
知ってるもなにも、だって同じクラスだった奴じゃないか。まぁ同じと言っても直接喋ったことは全く無いが(……教室でも見かけなかったし)。
でも、噂は耳にしたことがある。
―――日本を代表するどでかい企業の息子で、クラスには一切寄り付かない一匹狼の様な存在―――だと。
それに、一度だけ見たことがあった。テスト期間中のいつだったか忘れたが、職員室で教師と談笑している姿をチラリと見かけたのだった。じっくり見たわけじゃないが、こんなオーラを持つこの顔を忘れるはずがない。