怒った子犬
「笑わないで、チカ。あんたが笑うと余計腹立たしいわ」
「はいはい。で、こっちのうるさい子犬みたいなのが、真椰ちゃん。皐月真椰、風紀委員長だよ」
「あー、」
だからこんなにピッチリと制服を着てるのか。性格が表れてる。絶対A型だな、こいつ。
「キィー!こんなやつらに負けてる自分が悔しいわ!腹立つ!」
少女はダンダンと地団駄を踏んで叫んでいた。
ああ、そっか。
そうか。さっきから怒ってるのは、プライドが高いからか。
「…なによ」
「いや、別に。」
椅子に座りながらぼうっと二人のやり取りを見ていたら少女と目が合ってしまった。
「…どーせ、負け犬の遠吠えだってバカにしてるんでしょ?」
「してないですから」
「そんな嘘いらない」
「嘘じゃねーよ。」
はん、と鼻で笑われた。
「ああ、その口調が地なんだ。私、口悪い人キライ」
おいおい。口では嫌いだのなんだの言いながら、泣きそうになってるし。
俺は、真っ赤なソファーから立ち上がって、少女の目の前に立った。
「なっ。なによ!」
「あのなぁ、高みを持って努力出来る人間は負け犬じゃない。プライドが高い分、責任感が強くて仕事を頑張るタイプなんだろなって思っただけだ。」
「…っ、」
「それに、口悪いのはしょうがないだろ。…でも、同じ役員としてこれから仲良くしたいし、なるべく改める。気に障らせて悪い。ごめんな?」
俺はそう言い切ると、向かい合ったままツインテールの少女の頭をなでなでと撫でた。思ったよりも小さい。
「仲良くしてくれよ、皐月さん」
ああ、誰かに似てると思ったら近所に住んでた小学生のチビに似てるんだ、コイツ。懐かしいな。
「ふん!あんたなんか、すぐ抜かしてやるんだから」
「ん?ああ、楽しみにしてる」
俺は皐月さんに向かって、ニカッと歯を出して微笑んだ。