生徒会、ということ

 とりあえず、ひとつめの疑問。目の前の茶髪美人は誰。

 ニコリと微笑まれた。


「私?橘京子(たちばなきょうこ)。文化委員長よ。他に絵画部部長もしてて、好きな画家はねー、最近はシャガールに興味があるかな。休日は家で音楽聴きながら、油絵を描いてまーす!よろしくね」
「あ、はい」

 よろしく、と急に彼女に手を掴まれぶんぶん振られた。いた、ちょっと痛い。そうか、この人も役員なのか。思っていた役員と違うな。
 俺はてっきり、こんな進学校の役員なんて、みんな生真面目で冗談の通じないガリ勉ばかりだと思っていた。


 そうか、こんな普通そうな子も役員なのか。
 呉永さんよりも、社交的だし。



「みんなみたいに、ユウちむもキョウコて呼んで構わないから。何か質問は?」
「あの、あ、はい」
「はい、どーぞ」


「さっきから俺の事ユウちむって呼んでるけど、なんなんスか?」

 ふたつめの疑問。だから、なんでユウちむ?俺、知り合いにもそんな可愛いあだ名付けられたことないのに。



「ああ、それはね」

 茶髪美人の口が金魚の様にパクパク開いたり、閉じたりした。えっと…とため息を吐き、そのあと明るい声が聞こえた。
「橘さん?」
「あー、そうよね、ごめんなさい。でも、リュウがそう呼んでるのよ」
「は?」
「それに、みんなユウちむって呼んでるわ」

「はい?」

全くわからない。

 ポカンと口が開きそうだ。
 わからない、わからない。初対面だからとかそんなレベルじゃない。
 また質問の答えじゃないし。

 そしてまたリュウだ。

 “リュウ”て人が言ったことは他の人もそう言うのか?この人達が言う、リュウて一体何者なんだ?


「“リュウ”って誰ですか?」

 呉永さんといい、橘さんといいリュウって人が呼ぶからだなんておかしくないか?一体誰なんだろうか?どちらかの恋人かなんかか?これだけの美人なら恋人ぐらいいるんだろうな。

 俺にはいないけど。自分で言うとむなしくなるな。


「あれ?まだリュウに会ってないの、リュウはねー。」
 うーん。と上をみる橘さん。上をみるのが癖のようだ。


「ねえねぇ、ユウちむ何点だった?」

「何が、ですか?」
「もう前回のテストよー。ユウちむって副会長だから、順位2位だったんでしょ」

 橘さんは茶髪の柔らかそうな髪をくるくるといじり、俺に向かってふわりと笑いかけた。綺麗な人だな。

「…なんで、リュウって人とテストが関係あるんですか、関係ないでしょ」

 俺の質問に答える気がないのだろうか?この人もなかなか掴めない人だ。

「それに、副会長で二位だってことも…」




 すると、橘さんは、驚いたのか、目を丸くさせた。
「なにいってるの、あるじゃない」
え?
「何が?」
「え?やだ、ユウちむ知らなかったの?この学校はね、試験の結果で生徒会役員が決まるのよ。」
…はい?

「ちょっと、本当に知らないの?点数順に、首席は会長、2位副会長、3位会計長、4位書記長…てなるの。だからテスト頑張ったんじゃないの?」
「え?!」
 なんだよ、それ
「そしてリュウは首席。だから、私達役員と全生徒を牛耳る生徒会長さまなの」
 今さらっとリュウて人の説明された。
 生徒会長?
 俺は、俺は
「知らなかったんだー、ユウちむ可愛いー」
「ユウちむ、2月に、転入して来たから…、」
「ふーん。詳しいのね」
「…」
「ユウちむ大丈夫ー?」
おいおいおい
「橘さん、あの、じゃあ」
「ん?」




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