紅色のソファー
白い指がピンと伸びて扉の近くの紅色のソファーを差していた。
「ユウちむ、座って」
「え、あっはい、」
俺は小さな声で「ここですか?」と確認すると、小さな頭が頷いたので、緊張を解す様にゆっくり腰掛けた。
「説明する。まず、」
「あ!あの呉永さんっ!」
「…なに?」
どんぐりみたいな大きな瞳が俺をとらえる。まつ毛長いな。白い肌がツヤツヤしてる。じゃなくて!
「…ユウちむて何ですか」
恐る恐る質問してみる。美少女は驚いたように目をぱちくりさせた。
「くれな、」
「リュウが。ユウちむて呼んでる、から」
「……。」
リュウって誰ですか。
まず、俺そんな名前の友達いねーし。
それに、質問の理由でもない気がするんだけど。
「リュウってだ…」
「おはよう、ございまーす!ごめんなさい遅れましたあー!」
突然、俺の声は大きな声にかき消された。
その声の方を振り向くと、ドアの隙間から気まずそうな顔をした茶髪の女子生徒と目があった。女子生徒は、長いまつ毛に毛先がふわふわとしたセミロングの髪型で。美少女とはタイプが違うけど、この人も美人の枠に入る。と思う。
「あれっ、ショウだけ?」
「おはよう」
少女は荒い息を正しながら、初対面の俺をジロジロと珍しげに見つめた。
「ショウこの人だれ?」
「…ユウちむ」
俺に指をさしたまま、茶髪美人は目を見開いた。
「きゃーー!」
「えっ?」
「この人がユウちむ?!先生が言ってたのとだいぶ違うじゃない!髪もボサボサだし、そんなー、ショック!!」
人のこと指差して叫ぶなよ。それに先生て誰だ。そしてその人はなんて言ってたんだ、俺こと。
まあ、確かに髪は引っ越しとかバタバタしてて何ヵ月も切ってないけど。ボサボサは酷い。
「…キョウコ遅刻」
「えへ。……あー、ごめんなさい。久々だったから制服が見当たらなくて。部屋中探してやっと見つけたと思ったらこんな時間だったの。」
えへ、と舌を出す茶髪女子。ふわりと髪が揺れる。話に入れないと判断した俺はタイミングを見図る術もなく、突然に言葉をかけた。
「あの、」
「「なに?」」
俺の言葉で、二人が同時にこっちを向いた。大きい目が、4つ。なんだか、圧巻。
「…すみません。あなた、誰ですか?」